【出版記念】忘れられたわたしを迎えにいく旅

このたび、初めての著書
『忘れられたわたしを迎えにいく旅 ― 生きづらさを解く、自分を知る心理学』を出版することになりました。

ずっと「がんばらなきゃ」と思って生きてきた人が、
身体の限界とともに立ち止まり、
心の奥にいた“忘れられていた自分”と再会していく、再生の物語です。

本の中でベースになっているのが「パーツ心理学」というアプローチ。
今回はその出版を記念して、日常に役立つパーツ心理学の視点と、
そこから育まれる“心の境界線(バウンダリー)”の大切さ
について、お話したいと思います。

その「ひとこと」に、グサッときたあなたへ

職場の人間関係や夫婦生活、子育てのなかで、
ふとした言葉や態度に、
「なんでそんな言い方するん?」と腹が立ったり、
「こんなにやってるのに伝わらへん…」と涙がにじむ夜もある。

そんなとき、
その人全体が「イヤ」になったような感覚になること、ありませんか?
でも実は、それは「その人の中の一部分」が今、前に出てきているだけかもしれません。

この「パーツの視点」を知ることで、私は自分自身にも、人との関係にも、ずいぶんとやさしくなれるようになりました。
欠点と思えるような部分への見方が変わるだけで、生きづらさが解かれる心理学をあなたにも知ってもらえればと思います^^

パーツ心理学ってなに?──「心の中の、あなたのチーム」

もしあなたの心の中をのぞいてみたら……
そこには、映画『インサイド・ヘッド』や『はたらく細胞』みたいに、
いろんな役割をもったキャラクターたちが、今日も慌ただしく働いているのかもしれません。

たとえば朝、会社に向かう電車の中。

■「やることリストは…?」と手帳をチェックするミセスチェック
■「今日も失敗したらどうしよう」と不安でそわそわするもしもちゃん
■「なんであの人、またあんな言い方するの!」とブチギレてるムカッと団長
■「どのみち誰も分かってくれない」と下を向いてるぽつりちゃん

心の中の“司令室”では、こんなメンバーたちが
交代でハンドルを握り、あなたの「思考・感情・行動」をナビゲートしているのです。

パーツ心理学は、こうした“心の登場人物たち(=パーツ)”がそれぞれに役割を持ち、
時にはぶつかり合いながら、あなたの人生を必死で支えているという見方をします。

そして何より大切なのは、

彼らは「問題児」ではなく、
すべて“あなたを守ろうとした存在”だということ。

それぞれのパーツには、生まれてきた理由があります。

・失敗を避けたくて予定を詰めこむ【完璧を目指す作戦本部長】
・誰かに嫌われないよう先回りして動く【がんばりすぎる気配り係】
・過去の傷からあなたを守ろうと怒りを背負う【限界を知らせる怒りの番人】
・何度も期待を裏切られ、静かに閉じこもる【自信がもてず引きこもる影】

それはまるで、細胞たちが「いのちを守る」ために働いているように、
心のパーツたちもまた、あなたという“ひとりの人間”を支えている戦友たちなのです。

パーツ心理学では、そんなパーツたちと対話し、理解し合いながら、
誰かが「ひとりで暴走」しないように、チームとしてのバランスをとっていくことを目指します。

つまり、あなたの心の中にある「小さなチーム」のキャプテン(=大人なあなた)が、
それぞれの声を聴き、必要なサポートをしてあげるイメージです。

「なんで自分ってこうなんやろ」
「また同じことでイライラしてしまった…」

そんなときは、自分の中にいるパーツたちにちょっと目を向けてみてください。
もしかしたら、今日いちばんがんばってるのは、
「ミセスチェック」かもしれないし、「ムカッと団長」かもしれません。

そして、彼らの声に耳をすませることは、今まで自分が置き去りにしてきた本音、
忘れられた「わたし」を迎えにいく、最初の一歩になるのです。

実際に取り組んだ方の声

パーツ心理学を取り入れて、過緊張や自己否定から回復していったクライエントさんは、こんなふうに語ってくださいました。

「自分のことをありのままに見つめ、知っていく時間は、予想以上のワクワク感がありました。
悲観的な性格や不安が強いことは、元々の特性だからと半ばあきらめていたのですが、『自分を守ろうとする働きだった』とわかり、ホッとしたんです。

一番うれしかったのは、人間関係での過緊張や過剰適応がかなり改善されたこと。
自分に対しても他人に対しても、すぐジャッジしたり、ミスで落ち込んだりすることが減ってきて……
その分のエネルギーを、“やりたかったけどできていなかったこと”に使えるようになってきたのが、本当に大きかったです。

自分では短所と思っていた性格が、見方を変えると強みにもなる。
パーツ心理学って、そんな“自分の味方になる”面白さがあるんだなって思いました。」

こんなふうに、「全体」ではなく「部分」として自分や相手を見つめ直すと、関係性の空気も、自分の心の声も、驚くほど変わっていくのです。

パーツに気づくと、人との距離感が整いはじめる

人との距離感に悩んでしまうとき、
その奥では、私たちの中の“あるパーツ”ががんばりすぎていることがあります。

たとえば…

・「迷惑をかけちゃいけない」と先回りして動く【いい子ちゃん】
・「嫌われたくない」と必死で笑顔をつくる【スマイル係】
・「ちゃんとしてなきゃ」と緊張を強いる【カンペキさん】

どのパーツも、過去に身につけた“生き延びるための作戦”として、
誰かとの関係をうまく保とうと努力してきた存在です。

でも、その作戦をずっと続けていると──
「自分と相手の境目」があいまいになって、どこまでが“わたし”なのかわからなくなってきます。

パーツに気づくと、心に「輪郭」が戻ってくる

たとえば、怒りのパーツ「ムカッと団長」が出てきたとき。

「また私ばっかり損してる!」
「いい加減にしてほしい!」

そんな声が心の中で騒いでいるとき、
ただ“怒ってる自分”に飲み込まれるのではなく、こう問いかけてみる。

「今、わたしの中のどの子が、前に出てるんやろ?」

すると、ふと冷静になれる一瞬が生まれます。
「私=怒ってる人」じゃなく、「私の中に怒ってる誰かがいる」と気づける。

この「自分の中で起きていること」に気づく力が、
まさに セルフアウェアネス(自己認識)です。

境界線は、「切る」ためではなく「守る」ためにある

セルフアウェアネスが育つと、こうした問いかけが自然にできるようになります。

・今、私の中でどんな感情が湧いている?
・その声は、どんなパーツのもの?
・どこまでが「わたしの責任」で、どこからが「相手の課題」?

すると、自分の内側と外側の「輪郭」がはっきりしてくるんです。
それが、境界線(バウンダリー)です。

バウンダリーとは「突き放す線」じゃない

バウンダリーという言葉を聞くと、
「距離をとること」や「相手を遮断すること」と思われがちです。

でも本当は──
「自分を大切にする」と同時に、「相手を尊重する」ための線。

自然界にあるものは、個として存在しています。
ドレッシングも、どんなに振っても、水と油が混ざることはありません。

それぞれ違って当たり前で、その違いを敬い、愛すること。
相手が自分と違うこと、自分が相手と違うことを受け入れること。

「これはいや」と言えることも、
「今はひとりにさせて」と言えることも、
実は、関係を壊さないための優しい知恵。

パーツと境界線の関係は、「体の声」にも現れる

パーツに気づかず無理をしつづけるとき、
身体はサインを出してくれます。

・肩こりや頭痛、過呼吸、涙が止まらない
・喉が詰まる、声が出しづらい
・お腹が痛い、眠れない、何もしたくない…

それは、「わたし」の内側がすり減って、境界が薄くなっているという証かもしれません。
パーツに気づき、「今、私は疲れてる」「この子が限界って言ってる」と認識できたとき、
ようやく「ノー」と言う勇気が湧いてくる。

心の境界線とは、「わたしをわたしのままに保つ」優しい輪郭

パーツ心理学のいいところは、
誰かを悪者にしない。自分も責めない。

そのうえで、
「いま、どのパーツががんばっているのか」に気づくことによって、
自分自身とのつながりを取り戻していく。

そしてそれは、
「相手に合わせるだけの関係」から、
「私も、あなたも、大切にする関係」への第一歩になるのです。

今のあなたの「運転席」には、どのパーツがいますか?

イライラしているときも、落ち込んでいるときも。
それは「自分の中の誰か」が、今懸命にがんばっているサイン。

相手に対しても、「今はこの人の“防衛パーツ”が出てるんだな」
そう思えるだけで、ぶつかり方が変わってきます。

『忘れられたわたしを迎えにいく旅』

生きづらさの正体を、やさしくひもとく一冊。
完璧に見せてきた自分の下にいた「本当のわたし」に、もう一度出会いなおすために。

パーツ心理学の視点から描く、心の再生の旅。

この本を通して、あなた自身の中にある「忘れられたわたし」に、
そっと手を差し伸べるきっかけになれたら、とても嬉しいです。

7/4(金)に発売予定です。下記リンクから予約注文も可能です^^
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