子どもが生き抜くために必要な”心のヘルメット”
・もっときちんとしたよい親にならなければと思い悩み、心配している人たち
・感情を抑えられなかったり、接しかたがとてもむずかしかったりする子どもを持つ親たち
・なりたてほやほやの親、あるいはもうすぐ子どもが生まれる親
・子どもに寄り添う時間がどんどん少なくなってきた親たち
子どもにどう対応していいかわからなくなっても、心配しなくていい。いつだってできることが1つある。
子どもに寄り添うこと。
ただ顔を見せてそばにいるだけでなく、子どもの精神面でも揺るぎない存在になること。それが「愛着」の子育てだ。
愛着が人生に与える影響
ルカ (当時6歳)
脳の大部分が形成されていて新しい環境はそれほど影響を与えなかった。
母親がまだそばにいて安全な避難場所になることを感じていた。
自己肯定感をしっかり持ち安定した楽観的な考え方が持てる青年へと成長する。
愛着スタイル:安定型
アン (当時3歳)
アンにとって彼女の母親は以前と違い予測できない行動をとっている。
母親の注目を引くために悲鳴をあげて自分の存在をアピールする必要がある。
最終的に母親が予測可能な反応をすると、アンは曖昧な行動をとり、本当の気持ちを示さない。
アンが成長すると他の人はアンが予測不可能な人、また不機嫌な人だと思うようになる。
アン自身のセルフイメージはあまりポジティブではない。
愛着スタイル:とらわれ型(不安・アンビバレント型)
ジョー (当時2歳)
叔父さんと生活。
叔父はジョーを愛していたが、良い教育とは厳格であることを意味すると考えていた。
ジョーが感情を表に出しすぎたり、うるさすぎたりすると、彼の叔父は怒り、時には罰を与えた。これはジョーを怖がらせ、彼は恐怖を避けるために、自分の感情を表に出さないようにする必要を学ぶ。それは家の中だけでなく、他の状況でも適応され、やがてその戦略は大人になってからも続く。そのスタイルは人間関係を築く上で問題になる。
彼のセルフイメージはかなりネガティブ。
愛着スタイル:回避型
エイミー (当時1歳)
たった1歳で保育園に送られる。
残念なことにそこの保育園のスタッフは十分にトレーニングされていなかった。
働きすぎでストレスが溜まった状態で一部のスタッフが子どもたちを虐待することもあった。
そのためにエイミーは不安になる。
彼女が安全を求めていたまさにその人たちによって、エイミーの愛と安全についての概念は完全に混乱させられる。
彼女は解決できない恐怖を経験しているので、すべての社会的状況を避けようとする。
大人になった彼女は自分が愛されるに値しないと考えるようになる。
彼女のセルフイメージは非常にネガティブ。
愛着スタイル:無秩序型
この動画で出てくる「愛着障害」や「愛着スタイル」については知るとよりご自身やご家族に対する理解が深まるので興味がある方は是非ご自身で調べていただければと思います。以前のブログ「安全基地になるための条件」でも少し取り上げているので参考にしていただければ嬉しいです。
興味深いのが、このスミス家の4人の子どもたちは同じ親元で育ったのにそれぞれ成長した時にセルフイメージや人との関わり方が大きく異なる点です。
子どもとの関わりで親(保護者)が与えた経験は、文字どおり子どもの脳の構造を形づくります。脳が成長段階にある幼少期にもし、社会状況や家庭状態が不安定になることで親自身が安定さを失うならそれが子どもの脳の成長にそのまま影響を与えることがあります。
同じ兄弟なのになんでこんなに違うんだろうというケースがよくありますが、もしかするとこのスミス家と同じような出来事が起こっているのかもしれません。
子どもは苦しいときも楽しいときも、一番身近にいる大人、親(保護者)との関わりを通して、自分がどんな人間か、どんな人間になれるか、なるべきかを学んでいきます。このようにして「愛着」は、子どものなかに、自我、胆力、生き抜く力、立ち直る力を育てていきます。
「愛着」は心のヘルメットのような役割
子どもは1人の人間なので楽しいことだけでなく苦痛、失望や、いら立ち、不満なども感じます。親はできる限りそういうネガティブなものを取り除きたいと願ってはいても、子どもたちの人生で常に前に出てそういった障害をなぎ倒していくことはできません。
親としてのあなたの仕事は、子どもに挫折や失敗を経験させないようにすることではなく、人生の嵐を乗り切るのに必要なツールとメンタル面での立ち直る力を与え、その嵐のなかをいっしょに歩いてあげることです。その時に親であるあなたが示す確かな愛着はヘルメットのようにクッション材のような機能として働きます。ヘルメットを被っていても事故を防ぐことはできませんが転んだ時のダメージは大きく変わってきます。
確かな愛着があれば、特に、大きなショックを伴う人生経験や、環境からのストレス、発達上あるいは医療上、遺伝上の障害、学習困難など、特別な問題に向き合っている子どもも生きやすくなる。
事実として、ほかの子たちより生きていくのに苦労する子もいる。そういう子たちは、常に急な坂で自転車をこいでいるようなものだろう。あなたは重力を取り除いたり、坂を平らにしたりはできないかもしれない。しかし常に寄り添って確かな愛着を育めば、少なくとも坂の勾配を変えて、それほど骨を折らずにペダルを踏めるようにはしてやれる。
子どもの発達に関する研究では、子どもがどう育つかの最もよい判断材料は、少なくとも1人の大人と確かな愛着を築けたかどうかであることがはっきり示されています。これは親がいない、また子どもにとって親が本来の安全基地として機能を果たせていない家庭で育つ子どもたちにとって朗報です。
親でなくてもいい、人生の中でたった1人でもいいから確かな愛着があれば、子どもは「自己肯定感」を持って世界と向き合っていけます。そして、キレない力、立ち直る力、生き抜く力、自分の心を見る力、共感する力を身につけられます。身近にいる大人であるあなたがその1人になって子どもの人生を大きく変えることだってできます。私自身周りにいた愛情深い大人によって”心のヘルメット”をもらい人生を変えてもらった一人です。
「完璧な親」にならなくていい
「もっとうまくできるんじゃないか」と日々葛藤している親たちに向けて本書ではこんな慰めと激励の言葉が綴られています。
子どものそばにいよう。愛情を注ごう。しつけの時間を、スキルを育てる機会にしよう。うまく心が通じなかったり、ほかにもさまざまな形でしくじったりしたときには、子どもに謝ろう。子どもにありとあらゆるチャンスは必要ないし、超人的な親も必要ない。必要なのはあなただけー欠点はあるが、しっかりそばにいてくれるありのままのあなただけだ。あなたがそういう親の1人なら、少し肩の力を抜いてほしい。
私も一緒に声を大にしてあなたに伝えます。
「超人的な親は必要ない。必要なのはあなただけー欠点はあっても、どんな時もしっかりそばにいてくれるありのままのあなただけ。」
この難しい世の中で日々子どもと向き合うすべての親にこの場を借りて改めて敬意を表します。
今回友人の二人目のお子さんを撮影する機会をいただき、子育てに奮闘する友人の姿を間近で見る機会に恵まれました。難病と闘った上のお子さんとの親子の関係性を観察しながら改めて親や周りの家族の愛情の大切さを感じました。
親になったすべてのみなさまへ
「おめでとうございます」
そして生まれてきた子どもたち、お兄ちゃんお姉ちゃんになった子どもたちへ
「生まれてきてくれてありがとう」