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フラッシュバックを減らす:「リラックスする」スキル

前回、発達性トラウマの症状の一つであるフラッシュバックを軽減させる方法の「今に意識を向けるスキル」について取り上げたので、今回はもう一つの方法「リラックスするスキル」をご紹介します。発達性トラウマの症状があるなしにかかわらず、現代人はスマホやSNSの影響もあって脳が情報過多になっているためどんな人にとっても、この自律神経を整える「リラックスするスキル」は役に立つと思います^^

発達性トラウマから回復するための段階の一つで欠かせないのが自律神経を整えることです。
なぜでしょうか?

通常、体は常にエネルギーを過不足なく、必要な部位にバランスよく供給し、調和を持って生きようとしています。しかしストレスがかかった生き残りをかけた状態になるとエネルギーをたくさんを必要とします。例えば心身にストレスを受けるとそれに抵抗するために身体のビタミンCが多量に消費されています。(掃除機でイメージすると弱モードよりも強モードにしたほうが電気を使うのと同じです。一般的に掃除機の強モードの消費電力量は弱モードの約5倍とも言われています。)

発達性トラウマのように慢性的なストレスが心身にかかり続けると、理想的な恒常性を保つことができず、体には重い負担がかかります。(普通の人が弱モードで行けるところを、常に最強モードにしないといけない状態)

そして特に発達性トラウマは、自律神経系に悪い影響与えてしまいます。なぜなら、ストレスと闘うために常に体は臨戦状態になるので、交感神経系が覚醒した状態が長期間続きます。交感神経が優位になると、体中に「今命をかけて戦っているのだ」と言う生理学的なメッセージが送られ、消化や免疫反応などが抑制されます。
そうすると消化や休息を担当する副交感神経のスイッチがなかなか入りにくい状態が出来上がります。

自立神経への負荷は、精神面だけに悪影響を及ぼすわけではありません。身体にもガタがきます。あなたは以下の症状に思い当たるものがありますか?

●消化不良、便秘や下痢といった胃腸症状
●喘息に代表される呼吸器症状
●じんましん、アトピーなど免疫系の異常
●慢性化している肩こりや腰痛
●しつこい偏頭痛
●月経前症候群
●化学物質過敏症
●慢性の疼痛、線維筋痛症

上記のものは、どれも神経の緊張と疲労のパターンが大きく関わっています。逆に言うと、神経を整えれば、こうした身体症状は軽くなっていく可能性が高いということです。

今回は過緊張になってうまく使えなくなってしまった副交感神経を上手に使えるようになるために役立つ「リラックスするスキル」をご紹介したいと思います。自律神経について扱った本はたくさんありますが、私が最近おすすめなのは、米イリノイ大学神経科学博士提唱のトラウマ・ストレスケアの最新理論をベースにした、新しいストレス消去法を扱った本、不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方です。
子どもでもわかりやすい内容になっていて、方法もシンプルで即効性があります。(絵も可愛くて見てるだけでホッとします笑)
このブログでは、その中に幾つかをご紹介しますが、実際には47個の対策がまとめられているので、気になる方はぜひ一度手にとって読んでいただければと思います。

リラックスが不安をよぶ場合

リラックスすることに対して、不安を感じる場合があります。これは「リラックス=無防備=危険」と脳が誤った記憶をしているからです。リラックスへの不安は、トラウマを継続的に経験した方や、リラックスしていた時にトラウマが降りかかってきた方の間でよく見られます。

トラウマは「気を抜いていたから起きた」と自分を責めている方は珍しくありません。また、何度もトラウマを経験したために、トラウマの終わりを実感する機会がまだない方もいらっしゃいます。

さらに、消防・警察など継続的な緊張が求められる職種に従事する方の中にもみられます。その場合は責務も加わり、「気を張り詰めているからこそ、職務を果たせている」と考えていることもあります。上に挙げた例の場合、「緊張=安全」とは、理にかなっているように聞こえるかもしれません。

しかし、緊張はエネルギーを消耗します。そして、フラッシュバックを起こしやすい状態になりがちです。

リラックスはスマホの充電にも似ています。緊張している状態はスマホの電池量10%の状態のようなものです。大切な電話をかけたり肝心なビデオを撮ったりしたい時に電池切れしやすい状態です。エネルギーを消耗する緊張とは対照的に、リラックスはエネルギーを充電してくれます。たとえ100%にできなくても、時々充電することでスマホを使える時間が伸びます。充電されていると、必要な状況で最適な行動がとれます。

フラッシュバック予防や回復のために、「プチ充電」ともいえる、リラックスの方法を使ってみましょう。リラックスとは、しているか、していないかの二択ではありません。 リラックスには「度合い」があります。
リラックスすることに対して、不安を感じる場合、「すっかりリラックスすること」を目指さなくてもいいんです。リラックスの度合いを、あなたがコントロールできる形で学びます。
「リラックス」ではなく、「緊張を少し緩ませる」程度でOKです。そして、時間は、あなたが緊張を緩めても不安にならない程度の短さです。30秒、1分、2分といった、短い時間で構いません。そして、数秒、数分でも緊張が緩む心地良さを感じます。

これからご紹介する、緊張を少しゆるませる方法の中から自分に合いそうなものを選んで実践してみてください。短い時間で、コントロール感を保ちながら、緊張をゆるませることができるようになっていきます。

安心の仕組み

「リラックスするスキル」を学ぶ前に、安心(リラックス)の仕組みについて少しお話ししたいと思います。自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの神経によって成り立っています。

交感神経は、車で言うアクセルの働きをしており、興奮や覚醒を担当しています。そして、副交感神経は、ブレーキのようなものでリラックスの役割を受け持ちます。この2つは、1日の中でシーソーのようにバランスを取りながら、絶えずどちらかが優位になることを繰り返し、私たちの心身を健全に保っています。

アメリカのイリノイ大学で精神医学名誉教授を務める、スティーブン・W・ポージェス博士によると、人間の副交感神経は、さらに2つに分けられるそうです。休息と消化を司どるバックスイッチ(背側迷走神経系)と、他者と心地よくつながるフロントスイッチ(腹側迷走神経系)の二つです。前者を「休息・消化モード」、後者を「つながりモード」と言います。

ブレーキ(副交感神経)の中でも、最もマイルドで性能が良いのがフロントスイッチの「つながりモード」です。他者との関係を司るフロントスイッチがしっかり機能していると、自分の中で起こる感情や反応に「客観性」が持てるようになります。
なので、もし何かパニックに陥ってしまったとしても、そんな自分を客観視できるので、パニックは増幅されずに、すぐに収まります。

しかし、このフロントスイッチは、みんなが生まれ持っているものではなく、成長過程で発達させていくものなので実は、これがうまく育っていない人が非常に多いのが現状です。一方で、バックスイッチ(休息と消化を担当)は、生命維持に絶対的に必要なので生まれながらにして誰もが持っています。みんな持っているバックスイッチも、自律神経が乱れていると、機能が落ちてしまいます。
なので、まずバックスイッチを優先して育てる必要があります。最終的にはフロントスイッチはとても重要ですが、そもそもバックスイッチがしっかりしていないとフロントスイッチも育てようがありません。

なぜなら「つながりモード」に入るには、一人で十分に休む神経が充実している必要があるからです。まずは、もともと私たちが持っている神経から整えることを始めていきましょう。

バックスイッチ:ー人でほっこり、のびのびリラックス

・腎臓の位置に手を当てる
腎臓は腰の上あたりの左右に1つずつあり、バックスイッチの神経が通っている臓器の1つです。そのため、この臓器の働きがよくなるよう内受容感覚に働きかけることで、「休息・消化モード」が大きく育ちます。

腎臓の位置(腰の上あたり)に両手の平を当て、その温かみを感じてみましょう。座った姿勢でもいいですが、寝る前に横になって行うのがベストです。重力によって、腎臓が手の平の上で休むような形になり、より効果がわかりやくなります。実際に、腎臓に手の平を当てていると、アドレナリンの分泌が緩やかになってぐっすり眠ることができます。
素肌に直に触れるよりも、パジャマや服の上から手を当てたほうが、自分の落ち着いていく感じがわかりやすくなります。

だいたい腰のあたりから少し上に触れてみて、「あ、このあたりに触れていると気持ちいいし、なんだか安心する」というところがあれば、それでOKです。慣れてくると、腎臓の拍動も感じられるようになるそうです。腎臓と親しくなりましょう^^

・お腹を手の平で温める
バックスイッチの「休息・消化モード」には、「お腹」が深く関わっています。「消化」の名が示すとおり、大腸にも小腸にも、この神経は通っています。おへその周辺ならどのあたりでもいいですから、手の平を当ててみましょう。もちろん温めても良しです。
それだけで、「休息・消化モード」が促進されます。リラックスできて調子の良いときには、腸が動くのを手の平で感じ取ることができるはずです。
逆に、ストレスが溜まっていると、お腹が硬くなっているのがわかると思います。そういうときであっても、心配せずに自分の手の平をしばらく置いていると腸の動きが出てきます。慣れないうちは、刺激が直に伝わり過ぎないように、服の上からそっと温かさが伝わるような要領で行います。

・お腹いっぱいなのをイメージする
食欲が満たされると、眠くなってきたり、幸せを感じたりしますが、それはバックスイッチ(副交感神経)の「休息・消化モード」が刺激され、脳へと良いシグナルを送っているからです。

なので、美味しいものを食べて、満足してお腹いっぱいな状態を頭で想像するというよりも、できたら、お腹で想像してみてください。意外かもしれませんが、実は、脳から内臓への情報よりも内臓から脳へ伝える力の方が強力なので、実際に食べなくても脳は幸せを感じてくれます。

心身ともに満たされて幸せになると、呼吸が深くなったり、感覚として身体が拡がるような感じがするかもしれません。どれもバックスイッチが育ってきている証拠です。この状態から人ともっとつながりたいと思う段階(フロントスイッチ)へと移行できることもあります。

・脳幹にタッチする
首の後ろと頭との境あたりには、「脳幹」という中枢神経の器官があり、フロントスイッチもバックスイッチも通っています。そのため、ここを少し手やクッション・枕で支えてあげると気持ちが静まります。揉むようにマッサージしても良いですし、単に手を当てているだけでも効果があります。
背もたれに体重を預け、組んだ両手の平に頭を乗せるようなポーズを取ることがありますが、ちょうど手の平が触れてる窪みのあたりが脳幹です。

何かイライラするようなことがあったり、興奮を収めたいときには脳幹に触れてあげてください。また寝る前の5分間、首の後ろに手を当てていると、1日活動して過覚醒ぎみになっていた神経が休まり、おだやかな眠りに入れます。

・重さのあるものを足に乗せる
睡眠に問題を抱える人には、腎臓や脳幹へのタッチに加えて、両足のすねを手で押すというものがあります。これによって交感神経の興奮が収まります。このワークをより簡単に自分で行うには、重みのあるものを利用することです。

具体的には、2キロくらいの重さで、しかも、両足のすねにまんべんなくまとわりつくようにフィットするものを乗せられたら理想的です。おすすめはお米です。横になって、2キロ程度のお米を袋のまま、両足のすねの上に置いてみましょう。それだけで気持ち良いと思います。
そのまま10分もすると、神経が落ち着いて眠くなってくるはずです。そうしたら、すねの上から取り除いてぐっすり眠ってください。

お米の他に、そば殻の枕や、レンチンで温める薬草のホットパットとかもいいですね。

・”ゆっくり動くもの”を見る
交感神経が活性化されたままの慌ただしい日常に、意識的にスローリズムを取り入れていきましょう。それには、ゆっくり動くものを見つめるのがおすすめです。

たとえば、ビールや炭酸水の泡、水槽のぶくぶくなど、空の雲でもなんでもいいので、ゆっくり動いているものをしばらく見つめます。時間的には3〜5分も眺めていれば十分。だんだんと自分が緩んでいくのを感じられると思います。

緩む感覚が得られると、見ている対象に合わせて無意識にゆっくりと身体が揺れ始めます。本人は気づかないことが多いのですが、これは、圧受容器という血圧を調整する部位が、正しく働いている証拠です。
これは、イラッとしたときの対処療法としても適していますから、会社のデスクの引き出しに、砂時計などを入れておいてもいいですし、スクリーンセーバーをゆっくり動くものに設定するのもいいですね。

フロントスイッチ:つながりモードを育てる

バックスイッチが育ってきたら、次はフロントスイッチ(腹側迷走神経)のワークもやっていきましょう。フロントスイッチの「つながりモード」は、高まった交感神経に対する最良のブレーキとなります。もし自分の中にフロントスイッチを含む神経ができ上がっていなければ、人とのやりとりは苦痛を伴います。そこで、人と関わらずに行えるワークでフロントスイッチを育て、「つながりモード」に入れるようにしましょう。

フロントスイッチである腹側迷走神経の他にも、人と関わるのに使われる神経は、顔・口腔・鼻腔などの感覚を脳に伝える三叉神経、表情をつくる顔面神経、声を出し韻律を奏でる舌咽神経、頭を動かす副神経などがあります。

これら神経を刺激するワークを続けていれば、他人と過ごす時間に苦手意識や、緊張を感じていた場合でも、自然とつきあえるようになり、誰かと一緒にいることが「楽しくくつろげる」ものに変わっていきます。また、自分への信頼感も増していきます。

・「ぼぉーー」「ぶぅ――」 と声を出す
船は出入港するときに、「ぼぉー」 「ぶぅー」という汽笛を鳴らすのを耳にしたことはありますか?どこか、のんびりした響きで心が安らぐ音です。実は、その音をまねて声に出してみることで、フロントスイッチが育ちます。

「ぼお――」 「ぶぅーー」と声に出しながら、首の前あたりに手を添えていると、指先に振動が伝わってくるのがわかります。このとき、フロントスイッチの通っている咽頭や喉頭、心臓に、良い刺激が加わっています。耳の中にもフロントスイッチがしっかり通っているので、「ぼお――」 「ぶぅーー」としばらく繰り返していると、気持ちが落ち着いていきます。

このワークは、マイルドなブレーキの働きを促進し、「つながりモード」を鍛えてくれます。そのため、ただ落ち着くだけでなく、社会的な活力をキープできます。つまり、活力はあるのに落ち着いているという理想の状態に自分を持っていくことができます。

朝、家を出る前に、「ぼぉー」「ぶぅ―――――」と声を出してから学校や仕事に向かうことを習慣にしてみてください。

・口笛を吹く
口笛を吹くことで、人と関わるときに使う神経が通っている口周りの筋肉から、横隔膜までを働かせます。しかも、呼気を吐くことで気持ちが落ち着くので、口笛は「つながりモード」の構築にぴったりのワークと言えます。

口笛が吹けないというのは、フロントスイッチがあまり働いていない証拠だそうです。最初はうまくできなくても、何度もチャレンジしているうちに吹けるようになります。一人のとき、たとえばお風呂の中で、ちょっと口笛を練習してみても良いかもしれません。

慣れてきたら、何か一曲吹けるようになれたらいいですね。フロントスイッチの強化には、高くて伸びのある音が効果的です。

・「馬の呼吸」を使う
馬は「ヒヒーン」といななくイメージがありますが、実は、呼吸するときは「ブルブル」という音を立てます。正確には、息を吐くときに口の周りをブルブル震わせています。この呼吸は、フロントスイッチを育てるのにぴったりなので私たちも挑戦してみましょう。

口からでも鼻からでもいいので、大きく息を吸います。そして、唇を自然に閉じたまま、その息を思い切り口から吐き出します。すると、口の内側から吐く息に押され、唇がブルブルブルと震えます。
このとき、口輪筋という口周りの筋肉がよく動き、顔面神経が大いに刺激され、フロントスイッチが育ちます。
ブルブルブルと唇が震えず、「うー」と声が出るだけで終わってしまう人は、フロントスイッチを含む神経が引き出されていないサインです。
でも、繰り返し挑戦しているうちに口輪筋が鍛えられ、できるようになります!
口輪筋が鍛えられればフロントスイッチが強くなるだけでなく、顔のたるみも抑えられるのでアンチエイジングにも良きです。諦めずにチャレンジしましょう。

・トイレでぎゅーっと酸っぱい顔
「人に会うとぐったり疲れてしまう」という人は多いですね。でも、仕事の打ち合わせもあるし、プライベートでも友人とのおつきあいは必要だし。。。と、無理をせざるを得ませんよね。そして、その無理がまた自分を「つながりモード」から遠ざけてしまうという悪循環に陥ってしまいます。

そんなときは、顔の筋肉を総動員して、フロントスイッチをオンにしましょう。梅干しを口に入れたときの酸っぱい顔のように、3秒間くらい目と口元をぎゅーっと顔の中心に寄せるように力を入れます。

人前だとなかなか思いっきりできないと思いますので、トイレの個室など人目が気にならない場所でやってみましょう。思いっきり力を入れて行うと、額の筋肉も、頬の筋肉も、口周りの筋肉も動いているのがわかります。

鏡の前でうっすらと目を開けて行い、自分の顔を見てみるのもおすすめです。思わず吹き出してしまうほど変顔を作ってみてください^^

・バイオリン(弦楽器)の音色を聞く
耳の奥には、バイオリン(弦楽器)の音色を聞くスイッチが通っており、ここは高くて伸びる音を、特によく拾います。そうした音を聞くことで、中耳の筋肉が刺激されフロントスイッチを育てます。

オペラなどもいいですが、フロントスイッチを含む神経が脆弱だと、人の声が入っていることでかえって疲れてしまう場合もあるので、そんなときは、弦楽器の音色がおすすめです。

弦楽器の中では、バイオリンがより高い音を奏でます。クラシックコンサートに行くのももちろんいいですが、YouTube などで有名バイオリニストの演奏を聴くことができます。おすすめの曲は、「チャールダッシュ」「タイスの瞑想曲」 「G線上のアリア」 だそうです。

・ほっぺたに温度刺激を加える
ちょっと一息つきたいときなど、無意識に頬杖をついたりする時がありますね。頬に刺激を与えると、ホッとした気持ちを味わうことができフロントスイッチを育てられます。

頬への刺激により良いのは、心地良い温度を与えてあげること。暑い日には冷たいものを、寒い日には温かいものを頬に当ててみてください。それだけで、なんだかほっとします。頬に当てるものは、ホッカイロやアイスノンのような市販物でも良いですし、マグカップに飲み物を入れてしばし頬にくっつけてフロントスイッチを育てましょう。

・動物と触れ合う
あなたはペットを飼っていますか?飼ったことがある人は、ペットと触れ合ったときに感じる、愛おしく温かい気持ちを、体感したことがあると思います。これは、オキシトシンという愛情ホルモンが分泌されている証拠です。この感覚を味わうことでも、フロントスイッチを育てることができます。ペットとの触れ合いを重ねることで、人とのつながりを心地良く感じられるようになっていきます。

もちろんペットを飼っていなくても大丈夫です。今は、猫カフェ、ウサギカフェ、ハリネズミカフェ、フクロウカフェ、犬のお散歩レンタルなど、さまざまな動物と触れ合えるお店やサービスが充実しています。動物が好きな人は、ぜひ積極的に動物たちとの触れ合いや、接点を持つようにしましょう。
大事なのは、「触れるのは気持ちがいいことだ」と、皮膚感覚で理解することです。

・感謝の気持ちを持つ
普段から周囲に感謝する気持ちが持てれば、その人はいつも「つながりモード」 にいられます。そして、この感謝の気持ちは、目の前に誰もいなくても、一人で行うことができます。

一番おすすめなのは、日々の自分の生活に「どれだけの人が関わっているか」を想像してみることです。たとえば、一人でくつろいで好きなものを食べているとき、私たちは幸せを感じます。そのとき、間違いなくバックスイッチの「休息・消化モード」が働いています。
でも、そこで終わらせず、その食べ物を売ってくれた人、つくってくれた人、運んでくれた人・・・・・・、と深掘りして想像し、感謝してみます。すると、一人で食べているだけにもかかわらず、自分はたくさんの人に支えられているという気持ちが湧いてきます。

そして、自分もまた誰かの役に立っていると想像してみます。もし面倒なことを頼まれても、イライラするだけではなく、つながりを感じるチャンスと捉えます。毎日のすべてを、自分のフロントスイッチを含む神経を整えるのに役立ててしまいましょう!

安心のタネを育てよう

リラックスの神経、副交感神経には、バックスイッチ(背側迷走神経系)とフロントスイッチ(腹側迷走神経系)がありました。これは、それぞれ休息・消化の神経と誰かとつながる神経です。

この2つを適度に刺激し、使っていくことで神経の土台ができていきます。安心が定着すると、ストレスに強くなったり、チャレンジできたりします。気に入ったワークがあったら日常的に無理なく実践し、何か困っている症状や問題があれば、対症療法的に取り入れる。この2つをやってみると、パターン化された緊張や疲労、過敏性にだんだん変化が現れてきます。

あなたの中に安心のタネを育てるということは、周りにも、社会にも安心のタネを蒔いていることになります。

バックスイッチのワークをやって、ある程度穏やかさが定着したら、フロントスイッチのワークを。そしてまたバックスイッチのワークをやる。これを繰り返していきます。
そして、 安心のタネが育つと、傍から見てもわかりやすい変化があります。自分で変化に気づくだけでなく、次のようなことを友人や同僚、周りの人から言われるようになったら、ワークがうまくいっている証拠です。
顔色が良くなったね、肌ツヤが良くなったね、生き生きしているね、声がいいね、覇気があるね、おしゃべりしていると楽しい、性格が丸くなったね。

そうやって、緊張と疲労のサバイバル状態を、徐々に手放すことに成功します。無理に人とつながる必要はありませんが、適度な距離感がつくれると、心身の機能が高まります。安心のタネが育った、整った心と身体であれば、自分も他人も大事にできる。これは、どんな世の中になっても生き抜いていける秘訣です。

今までずっとトラウマと闘い続けてきたあなたの心に、安心のタネが蒔かれて、安らぎをおぼえる日が来る日を、私も心待ちにしています。

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