幸せな記憶の作り方
脳というのは、ネガティブな経験にとってはマジックテープで、ポジティブな経験にとってはテフロンである
これは神経心理学者のリック・ハンソン博士の言葉ですが、みなさんもそう感じることはありませんか。
ほかの心理学者も「1回の失言を挽回するには5つの肯定的な言葉が必要だ」と主張しています。
私たちの脳は楽しい出来事よりも嫌な出来事の方が記憶に残りやすいからです。せっかくの旅行でも楽しみにして行ったお店が定休日だと分かった瞬間、それまでの楽しかった気分が一気に消えてがっかりすることがあります。
悲しい出来事をそのままにすると、ネガティブな経験は私たちの脳に張り付いて、それまでの楽しかった記憶はスルッと抜けてしまいます。
幸せな記憶がすぐに消えてしまうテフロン加工の脳ではなくマジックテープのように貼り付いて定着させるためには何ができるでしょうか?
「人間の脳は何でも否定的に受け止める傾向があるため、毎日の生活で意義ある経験を見分け、それを感謝、共感、回復力、自尊心といった内面の力に変えていくことが大事だ。ポジティブな経験に意識を向けつづけるうちに、それが符号化される」
ー 出典:小児期トラウマがもたらす病
ハンソン博士は「プラスの事実を探し、それをプラスの経験にする」ことを勧めています。
これは”0″を”1″にする作業ではなく、実際に自分の周りで起こっている”1″に気づく作業です。妄想や夢ではなく、事実としてどんなプラスの出来事が自分の身の回りで起こっているのかを探すことです。
例えば、行きたかったお店が空いてなくても、そのおかげで違う素敵なお店に出会えることがあります。違う場所に行くことで違う景色を楽しめたり、新しいことを知れたりします。
プラスの事実に敏感になるためには意識的に自分が楽しいと思うこと、嬉しいと思うことを経験する必要があります。
自分がどんなことで嬉しいと思うのかすぐに思い付かない場合は、もしかしたら毎日忙しすぎるのかもしれません。
幸せを感じて感謝するためのシンプルな方法としてある研究者は「止まる、見る、進む」ことを勧めています。
ハンソン博士によると「10秒、20秒あるいは30秒のあいだ、その瞬間を味わって脳に刻み込むー意識する時間が長いほど感情が刺激され、ニューロンが発火して結合し、記憶痕跡が強くなる」そうです。
寝る直前の情報が記憶として脳に定着しやすかったり、意識して「思い出す」ことで記憶に残りやすいことが知られていますが、このシステムを上手く使うと幸せな記憶も定着しやすくなります。
子どもと寝る前に、その日にあった嬉しかったこと、楽しかったこと、ウキウキしたこと、頑張ったこと・・・小さな出来事でもいいのでお互いに気づいた長所や周りの人の思いやり、自然の美しさなどを思い出してみると子どもが自分の「心の宝箱」に幸せな記憶という宝石を入れていくのを手伝うことができます。
辛いこと、悲しいことがあった日でも、その中で頑張ったこと、感謝できる事実に気づけるようになると、逆境を感動や喜びに変えることができます。いつでも自分で開ける「心の宝箱」を子ども自身が持っていると予測不能な慢性的なストレスからの影響を抑えることができ、立ち直りがはやくなります。
止まって、感じて、寝る前にまた胸があったかくなったことを思い出して、みなさんにとっての今日がハッピーな1日で終えれますように。