「振り返る力」の高い人ー逆境でも不安定になりにくい
「逆風は振り返れば追い風になる」
私の好きなフレーズでこんな言葉があります。人によって捉え方は様々だと思いますが、私がこの言葉でイメージするのは前に進めないくらいの壁にぶつかった時、いったん立ち止まって自分が今いる状況を観察したり歩んできた道を振り返る姿です。
逆境の時こそ「振り返る」ことが大切なのはなぜでしょうか?
「振り返る」時になにをすれば逆風は追い風になるんでしょう?
今回はそんなことを一緒に考えたいと思います。
振り返る能力が高い人では、実際に起きた出来事と、自分の感情や推測といった二次的な反応とを区別することもできる。それによって、事実そのものではない、自分の中に沸き起こった感情に押し流されたり、足を取られたりするということが起きにくい。ー出典:愛着障害の克服
人がストレスを感じるのは多くの場合、出来事によるのではなく出来事をどう受け止めるかによります。たとえば、雨の日は「人が少なくてラッキー」だと思う人もいれば「濡れて鬱陶しい」と思う人もいます。同じ状況でもそれをどう受け止めるかでストレスに感じるかどうかが別れていきます。
受け止め方を変えるのに役立つのがメタ認知と振り返る力です。
- メタ認知とは、物事を考えるときに自分の視点に捉われず、一歩離れて俯瞰するように自分を観察することです。
- 振り返る力とは、自分の状況を客観的に振り返ったり、相手の立場になって考えることです。これには「共感力」や「洞察力」も含まれます。
たとえばもしセミがメタ認知を持つとしたらどんなふうに考えるんでしょうか?地上に出て自由に飛び回れる羽を手に入れたとき、はじめて自分が抜け出したところがどんなところかを知ります。暗闇の世界では気づくことができなかったものが見えてきます。自分が地上になかなか出られなかったのは、出ようとしていた場所がアスファルトの道路だったからだと知ると自分の努力が足りなかったわけではないと気づくと同時によくあの状況で頑張ってたなと過去の自分に尊敬の念さえ覚えるでしょう。
もしセミが振り返る力を持っているなら、自分より先に地上の世界に出て命のかぎりを尽くして叫び子孫を残そうとする母親ゼミたちの生き様を間近で見て、実は自分がどんなに愛されていたかを感じることでしょう。きっと十年前、この一帯はまだやわらかい土で自分の母親が顔を見ることもできない我が子のために最後の力を振り絞って一番良い場所を探している姿を想像すると胸が熱くなるでしょう。
もし自分がなかなか前に進んでいないように感じるとき、羽を手に入れたセミのように自分をちょっと上から観察してみるのはどうでしょう?
その時に大切なのは自分自身と相手の気持ちを興味と思いやりを持って知っていくことです。
「自分自身に対して興味と思いやりをもつことは自分の中に発見したすべてを好きになることではない。何かに苦しみ、助けを必要としている他者に与えるのと同じだけの、無条件の思いやりを持って自分を見つめるだけでいい」ー出典:身体が「ノー」と言うとき
できてないところばかり指摘される環境で育つと、どうしても自分に対して厳しくなってダメなところばかり目についてしまう傾向があります。その場合はロールプレイ(役割演技)を試してみてください。ロールプレイは学習・カウンセリング・心理療法などに用いられていて、共感力や洞察力を育てるのに役に立ちます。