安全基地になるための条件

「安全基地」とは安心して帰れる場所、いざという時に頼ることができ、守ってもらえる居場所で、そこを安心の拠り所、心の支えにすることができる存在です。ベースキャンプのようなもので安心して帰られる場所があるのでたとえ傷を負っても癒やされ再び外の世界へと羽ばたくことができます。

「安全基地がもてない障害」ー愛着障害

私たち人間が幸せに生きていくうえで必要なのは安定した愛着です。この愛着は他人との絆を結ぶ能力で、人格形成の土台となっています。人それぞれ自分の愛着スタイルを持っていて、どんな愛着スタイルを持っているかで対人関係や結婚・パートナー生活だけでなく、仕事の仕方や人生に対する姿勢まで大きく左右してくるので「第二の遺伝子」とまで言われるほど、私たちの生き方に影響を与えます。自分がどんな愛着スタイルを持っているか興味がある方は回避性愛着障害 絆が稀薄な人たちの巻末の愛着スタイル診断テストで自分の愛着スタイルを調べることができます。

自分がどんなタイプであったとしても、愛着障害を克服する上で大切なのは「安全基地をもてない障害」である愛着障害、つまり子どものころ安心して帰る場所がなかった人にとって安全基地(ベースキャンプ)のような存在を作ることです。

また愛着障害を克服する上で、自分自身が「安全基地」となることで問題を克服していく方もいらっしゃいます。親になった方やセラピスト、トレーナーの方や何らかのボランティア活動に関わっている方、誰かを支える活動をされている方はご自身が誰かにとっての「安全基地」になることで愛着スタイルを変えていくこともできます。

子どもの頃に安全基地となってくれる親や身近な存在に恵まれた人は安全基地となる能力を自然に身につけることができますが、そうした機会に恵まれなかった人は自分自身で努力して安全基地としての働きを身につける必要があります。身近で安全基地となる能力に長けた方がいれば、その方から安全基地とはどういうものか自分で体感して味わうことが自分自身が安全基地になる上での1番の近道です。でも今の時代そんな機会に恵まれない方もいらっしゃると思います。

この記事では、それでもご自身で努力してご家族や大切な方のために安全基地になろうとされている方にどういうことが必要で何を心がけたら良いのか安全基地となるための条件について「愛着障害の克服」という本から取り上げていきます。

安全感を保証する

安全基地になるとは、その人にとっての安心できる場所になることです。本人は安心して休みながら傷を癒せる場所を必要としているので、非難や批判、評価をすることではなく、ありのままの状態を受け入れることが求められます。ゆっくり休養をとって傷が癒やされたら私たちが出ていけと言わなくても自分から活動を再開できるようになります。カンガルーの子どもも未熟児で生まれますがお母さんの袋の中でおっぱいを飲みながら寒さや敵から安全に守られながら育ちます。外の世界に興味を持って遊びに出るようになっても、おなかが減ったり甘えたくなったら袋に戻る生活を繰り返します。そして生後1年ほどで子カンガルーは独立し、その後は袋に戻らなくなります。子カンガルーが自分のタイミングでお腹の袋に戻るのをただ無条件で受け入れるカンガルーのお母さんたちから学べることがあります。

私も気をつけたいなーと思ったのが、心配のあまり本人が今一番話したくないことを聞いてしまうことです。学校や会社のこと、家庭のこと、身体の調子のこと、今触れられたくないことを聞かれると心を開くどころか余計に落ち込んでしまいます。こういう場合は、まず本人にとってたわいもない話をすることから始めたり、黙って一緒にいるだけでも良くて、自分のペースでいていいと思ってもらえるのがポイントです。こちらのタイミングで相手が求めてもいないこちらの言いたいことを一方的に話すと本人が自分のことを話そうとするチャンスを逃してしまいます。一緒にいて安心感を持てるようになると自然と自分の方から話し出します。その本人のタイミングをじっくり待って何かを言ったらそれをしっかり受け止めて、丁寧に応えていきます。私も最近つらい時に友人たちがボイスメッセージを残してくれたり、なにも聞かずに寄り添ってくれたりしてそれがとても心地よかったです。

大事なのはこちらのタイミングではなく本人のタイミングですね!

感受性と応答性

・求められたら応える、求められていないことは言わない

安全基地になる上で特に重要なのが応答性です。反応するためには自分が求められていることにまず気づかなければ応えることができません。いつも心にかけ、気遣っているなら相手が出すサインにいち早く気づくことができます。

また求められていないことは言わない、与えないことも大切です。求められていないのに口出したり、与えたりすることは本人の主体性、自由意志を奪ってしまうようなもので、安全感を損なうだけでなく、自立を邪魔してしまうことになります。

・反応は素早く

安全基地を必要とするときは困っているときです。助けを求めているのにすぐに応えてくれないと命に関わる場合は特に危険ですよね。安全基地であるためにはマメであることが重要です。マメな対応ができない方は前もって期待させないように説明しておくと親切かもしれません。

・気分や仕草、声のトーンを合わせる

動作が同期されると私たちは気持ちが共有されたように感じ親密さが生まれていきます。居心地良く感じてもらうために相手の動きを鏡に映すかのように反応させます。声の調子や仕草はもちろんですが、視線の使い方も大事です。相手がまっすぐ目を見て話す場合は、こちらもそれに合わせます。相手が視線を逸らしがちな場合は、あまり相手をガン見しないで程よく視線を逸らしつつも、相手の反応から目を離さないように話を聞きます。この非言語的な反応が苦手な方は、幼い子どもや動物と遊んだりお世話することでそのスキルを高めていくことができるそうです。

安定性

安定、変わらないものというとイメージするのが岩なのですが、世界で一番大きい岩マウントオーガスタスは10億年以上前から存在しています。何があっても変わらずそこにある存在は安心感を与えてくれますよね。安全基地となる上でも必要なのが「安定性」です。その場の気分や都合で対応が変わると不安になってしまい頼るのは難しいですよね。前回は良かったのに、今回はダメだったり違う反応を見せるのも相手に混乱を与えてしまいます。できるだけ一貫した態度や応答を心がけると相手に安心感を与えることができます。

なんでも話せる

安全基地が「安全」なのは、自分の本音をぶつけてもそれを受け入れてもらえるからです。自分の思いや言い分を本人の気持ちよりも優先し押し付けてしまうと、安全基地ではなく思想構造の収容所と化してしまいます。

自分が大切にする信念や流儀に囚われすぎると、それ以外のものが受け入れにくくなります。本人が勇気を振り絞って想いを伝えようとしても、自分の経験や信念で相手を説き伏せることを繰り返すと、自分のことを認めてもらえないと感じ本音で話すことを諦めたり、顔を合わすことさえしなくなることもあります。

大切なのは自分の経験や信条は一旦傍に置いて、自由な心と相手の立場に立った共感でそのままを受け止めることです。何か言いたくなる気持ちはグッと堪えて余計なことは言わず、先入観を持たず無心で本人の話を受け止めることが大事ですね。そのためには自分の中の「〜べき思考」を捨てていく必要がありそうです。なかなか難しいですけど。。

私たちは誰かと話すことで頭の中が整理されていきます。バラバラだったものが統合され、傷や歪みが修復されるプロセスが始まっていきます。愛着障害を克服する上で「なんでも話せる」というのはこれ以上ない良い安全基地を見つけた証拠です!

みなさんにとってなんでも話せる人はいますか?自分が気を許せそうな相手をイメージして手紙を書くというのも良いかもです。子どもの頃に目の前で母親が灯油をかぶって自殺し、その後養父からの虐待を受けていたところ児童養護施設に保護されて今は大学生になっている方のインタビューを見ました。笑顔を取り戻した方法の一つが亡くなったお母さんに手紙を書くことだったそうです。言葉にしていく中で自分と向き合ったり消化できたりしたそうです。この方のインタビューを見ていて私自身も神さまにあてて手紙を書いていたことがあったのを思い出しました。うれしかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、だれにも言えない自分の中のドロドロしたものでも大丈夫です!頭の中にぐるぐると溜めておかないで、言語化して吐き出してみてください。さっきより心が落ち着いている自分に気づくことができます。

ACE(逆境的小児期体験)の後遺症と闘っておられる方、それをサポートする方、すべての方にとって闘い続ける上で羽を休められる場所、安全基地が見つかりますように。みなさんにとって本当の安全基地が見つかるまでの「仮の」安全基地の一つとして「セルフケアサポートサロン頭心大」もご活用いただけたら幸いです。

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