山登りが解離やトラウマ治療に役立つ理由

先月二度目の富士山登頂してきました。
私のことをご存知の方からすると山登りのイメージがないのでびっくりされます。私もまさか自分が「山」にハマるとは思っていませんでした。
セルフメンタルケアをサポートするお仕事をするようになって栄養・運動・睡眠・身体・脳の仕組み、、、メンタルヘルスに関連することをいろいろ勉強してきました。
本当に役に立つ情報をクライアントの方にシェアしたいと思って実際に自分のカラダで実験するのが最近の趣味になっています^^
今回は山登りが解離やトラウマ治療になぜ役に立つのか調べてみました。

「感覚を自覚する力を養うこと」ートラウマや解離から解放されるための第一歩

主体性は、科学者が「内受容感覚」と呼ぶものから始まる。内受容感覚とは、体に基づく感情である微妙な感覚の自覚だ。その自覚が大きいほど、自分の人生を制御する潜在能力も大きくなる。自分が何を感じているかを知るのが、なぜそう感じるのかを知るための第一歩だ。自分の内外の環境における絶え間ない変化を自覚していれば、その変化を管理する態勢に入れる。だが、それが可能なのは、私たちの監視塔である内側前頭前皮質が、私たちの内部で何が起こっているかを観察することを学んだ場合に限られる。だから、内側前頭前皮質の働きを高めるマインドフルネスの練習は、トラウマからの回復に非常に重要な一要素なのだ。
これはトラウマ治療の世界的第一人者ヴァン・デア・コーク博士のさまざまな治療法の効果を紹介する、全米ベストセラー本(体はトラウマを記録する―脳・心・体のつながりと回復のための手法)の中にある説明です。
ここでの「マインドフルネス」は宗教的な要素ではなく「自分の内外の環境における絶え間ない変化を自覚」することです。
シンプルに言い換えると、自分に関するごくささいな変化にも「気づく」ということが、トラウマから回復する上で重要なポイントだということです。
トラウマを抱えている方は「主体性」を失っている方が多いようです。
「主体性」(エージェンシー)とは、自分の人生を自ら取り仕切っているという感じを指す専門用語で、自分がどこにいるかを知っていること、自分に起こることに対して発言権があるのを知っていること、自分の境遇を形作るそれなりの能力を持っているのを知っていることを意味します。
人はだれしも自分の人生に責任を持ってコントロールしたいという願いがあります。
誰かからその本質的な願いを奪われると自尊心を失い、コントロールしたいのにできない状況におかれその葛藤に苦しみます。

トラウマというほどのものがなくても、日本人の多くの方から家庭や学校、職場でこの「主体性」を失ってしまって自分で自分の人生に責任を持って物事を決めるのが難しいという話を耳にします。
自己肯定感が低い場合はこの「主体性」が失われているとも言えるかもしれません。
物音や匂い、トリガーになるようなあるワードなどトラウマになった出来事と関連するものがあるとフラッシュバックを起こしパニックになったり、怒りが込み上げてきたり自分を責めたりします。
これは昔と今の境界線・区別がつかなくなって起こります。
また、だれかの言動にストレスを感じやすい方は他者と自分との間に境界線・区別がない状態、ミックスされている状況なので他者の言動に振り回されやすくなります。
この境界線がない状態を打破するためには、「今この瞬間の自分」を知る、気づくことが必要になってきます。
また解離や離人症といった症状を抱えると「今この瞬間」から切り離されて、遠く隔てられているかのように、感覚が麻痺してしまいます。
わたしたちの「自己」(自分が自分である)の感覚は、内受容と呼ばれる内なる感覚から作られています。内受容のおかげで、自分の身体を自分のものとして感じられます。
しかし、「強いストレスや子ども時代のトラウマ」など、逆境体験に直面したときに、現実に起こっている出来事と自分自身とのつながりを断つことで、その出来事のストレスから自分を切り離す防衛機制が作動することがあります。
これは、「今ここ」に意識を集中するマインドフルネスとは正反対の状態です。
慢性的なストレスや、生命を脅かされるような危機的な体験をした人は、自分の身を守るために感覚を麻痺させ、切り離し、できるだけ遠ざけようとします。感情そのものを手放す方もいらっしゃいます。
すると、自分がどんな状態にあるのか、何を感じているのかを、うまく把握できなくなります。
そのような人たちに必要なのは「感覚を自覚する力を養うこと」です。

「感覚を自覚する力」を養うトレーニング

以前メンタルを強くするのに「足元が不安定な場所での運動」(ボルタリングやサーフィン、トレイルランニングなど)が良いと聞いたことがあったのですが、この「身体はトラウマを記録する―脳・心・体のつながりと回復のための手法」の本を読んで「自分が何を感じているか自覚する」ことがいかに重要かを学んだとき、「足元が不安定な場所」だと過去の体験ではなく、「今の」自分の感覚に集中せざるを得ない状態だから良いんだ!ということに気づきました。

実際、登山している道中はクライミングコースなど岩場にしがみつきながら登っていくスリリングな瞬間もあって、どの手でどの岩を掴んで、足はどこにかけて、ちゃんと岩に引っかかってるかそれぞれの感覚に集中しないとおっこちちゃいます。。。

触覚だけでなく大自然の中で視覚、聴覚や嗅覚など五感をしっかり使って味わうと、見上げる空ひとつでもまったく同じ状況というのは存在しないので、フラッシュバックを起こした時でも自分が今どこにいるのかを確認できるスイッチを自分でいくつか作ることができるようになります。

ちなみに山頂で食べるカップラーメンは最高に美味しいです^^

自分の内側の反応に敏感になっていくと、自分の外側の自然界を観察するとき、動物や植物の生命の強さや自然の美しさに触れると自然と心が動くようになり、それがストレスを軽減させたり安心感を与える作用になるオキシトシンというホルモンを活性化させることにもつながります。

実際に日本では「森林セラピー」ができる認定の森が各地にあります。関東で私がお気に入りの場所は奥多摩です。都内から1時間ちょっとドライブすると大自然の中でハイキング・森林セラピーを楽しめます。

森の中で呼吸法やアロマテラピー等を組み込んだ心のリラクセーション・プログラムや、ウォーキングやノルディックウォーキングの運動を通じた身体のフィットネス・プログラムを行う森、温泉やヘルシーな郷土料理を楽しめたり、医師と連携して健康相談を行う森もあるそうです。

ぜひみなさんもご自身の近くの山や森で「感覚を自覚する力をアップ」させるトレーニングを始めてみませんか?

森林セラピー公式サイト→https://www.fo-society.jp/therapy/index.html

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