職場で起きやすい適応障害の3つのタイプ

最近、耳にすることも増えてきた「適応障害」

周囲から「甘えているだけ」「本人の性格の問題」とされてしまう場合も多く、理解されないまま苦しみを抱える人も多い「適応障害」

職場で起きやすい「適応障害」の3つのタイプとその予防策について学び、自分自身はもちろん、同僚や上司として適応障害で苦しむ人に対する知識と理解を得ることであなたが働いている環境をより良いものにするうえで役に立つ情報になれば嬉しいです。

今回のブログは「適応障害」についての理解とそのつらい時期を乗り越えるテクニックがのせられた岡田尊司さんの著書「ストレスと適応障害」からまとめた内容になっています。

適応障害とはなにか

「適応障害は、単に疾患というよりも、環境にうまく居場所をみつけ、自分の存在価値を認めてもらうという課題の躓きであり、心理社会的な障害である。
医者が薬を出せば、よくなるというわけにはいかない。せっせとうつの薬を出したところで、事態の改善には、あまり役立たないということにもなってしまう。本当に必要なのは心理社会的な介入であり、居場所や存在価値を取り戻すということなのである。」

適応障害はストレスによって心がバランスを崩した状態
ストレスがなくなれば元の状態に戻ることができる段階に留まっているーいわばうつ病になる手前の状態です。

もしこのまま限界を越えると脳はすぐには回復しないレベルのダメージを負い、適応障害からうつ病などの精神疾患に移行します。
うつ病の場合、ストレス状況が長く続くことによって脳の中の海馬と呼ばれる領域が萎縮し始めます。うつ病になると、無力感や記憶力低下、考えをまとめることが難しくなるのはこの海馬や前頭前野の機能が低下するためです。

生活環境の変化がきっかけになることが多い

転居や転勤、転校、昇進、配置転換、留学
対人関係のトラブルや孤立、離別や死別

適応障害の特徴は同じ環境でも適応障害を起こすかどうかは個人差によります。本人にとって何が苦痛で何が合わないかを理解するのがとても重要なポイントになってきます。

うつ病と異なる点はいいことや好きなことがあると元気や明るさを取り戻せるところです。
脳のレベルでは異常が起きるまでは至ってなく、合わない環境に対して当然の反応が起きているとも言えます。

適応障害の人がもし「うつ病」と診断されて気分安定薬や抗精神病薬を投与されるとどうなるでしょうか?

さらに体がだるくなって意欲も気分も沈んで学校や仕事どころではなくて今度は本当にうつ病になります。

なぜなら抗うつ薬はセロトニン(不安を鎮める働き)などの伝達物質を増やす働きがありますが、それを正常な脳の状態の人に投与すると鎮静がかかりすぎてだるさや意欲低下が高まってしまうからです。

適応障害になった時、本当に必要なのはまず少し休息をとって、合わない環境を本人が適応しやすいものに変えるか本人が適応しやすいように変わるかが回復のカギになります。

適応障害は学校・家庭でも起こりますが、今回は特に職場での適応障害について取り上げます。

職場で起きやすい適応障害の3つのタイプ

①容量オーバーで適応障害になるタイプ

容量オーバーの兆候
疲れが残る、朝がつらい、以前ほど仕事に対して新鮮な意欲や興味がもてない、集中力や能率が低下する、判断力が鈍くなる、人と顔を合わすのが面倒になる、電話が億劫になる、しなければいけないとわかっていることをつい後回しにしてしまう

容量オーバーが起きやすいシチュエーション
・環境や担当が変わったとき
新しい環境に入ったり移ったりしたときは、対人関係の面でも、仕事や課題の面でも、勝手がわからず、たいしたことをしていなくても気遣いが増え、慣れた環境で過ごす場合に比べて、知らず知らずのうちに何倍も疲労しています。
責任ある立場になったり、不慣れなことを担当したりする場合には、さらにペースをつかむまで容量オーバーが起きやすい状態になっています。

・環境や仕事内容にも慣れて、仕事をそれなりにこなせるようになったとき
スキルや立場が上がって中堅になると、仕事内容の質も量もに急激に増え、周囲からも頼りにされるようになっていきます。
仕事ができる人に仕事は集中しやすくなるため容量オーバーになる環境が整えられます。

・部下を使いこなせない、あるいは部下が使い物にならないとき
本来部下にやってもらうはずの仕事まであなたが全部面倒をみなければならなくなると、それはあなたがする仕事量をオーバーすることになります。

容量オーバー型の適応障害を予防するために
・休みを取る
睡眠や休息が不足すると本来であれば問題なくできる仕事もこなせなくなります。
無理を続けて擦り切れてしまう前に、思い切って早めに仕事を切り上げたり、休みをとってリフレッシュしましょう。
自分で無理をしていることに気付けない人もいるので、あなたの周りにもし無理をしている人がいたら手遅れになる前に一緒にリフレッシュする時間を作ってみるのはいかがでしょう。

・情報入力を少しでも減らす
脳が容量オーバーを起こしている時に、遅くまでテレビやスマホを見続けていると、ますます情報過多になり容量オーバーを悪化させてしまいます。
ネット依存の人にうつが起きやすいのも、原因の一つとして容量オーバーに拍車がかかるためと考えられています。

疲労気味なときには、いったん音楽や映像などの情報入力を減らして、脳を休めてあげましょう。
トイレ休憩やコーヒータイムを作って目を閉じて目からの情報をシャットダウンしてあげるだけでも、活動し続けるのに比べると容量オーバーを防ぐのに役立ちます。

・無理なくできる仕事の質と量を見極める
自分が無理なくできる仕事の質と量を見極めるためには、どんぶり勘定でなんとかなるだろうと仕事を受けずに、スケジュール管理・自己管理が必要になってきます。
無理をして仕事を受けていると、必ず仕事の質が低下してしまい、結局はあなた自身の評価も下がってしまうことになります。
そしてときには、それが致命的な失敗につながることもあります。 あなたの仕事の質を落とさずにこなすことができる仕事の量を管理し、それ以上の負担を求められたときは、「これ以上は逆立ちしてもできない」「うつになるか過労死してしまう」と、はっきり断る習慣をつけることが必要になってきます。

・仕事を部下に任せる
仕事ができる部下になってもらうためには部下のやる気や責任感を育てることも必要です。そのためには一度部下に任せたなら手だしや口だしをしすぎないようにします。
でもだからといってほったらかしにはしません。能力はそれぞれ違ってあなたと全く同じように仕事をこなせるわけではないので、何をしていいかもわからず、見当違いなことをすることもあるからです。
結局後で尻拭いをするのは、あなたなのでそれだけ負荷がかかってしまいます。そうならないように、随時ミーティングをして、仕事の分担や責任をお互い明確にし、進行状況を報告させ、必要な問題解決について具体的な方法やスケジュールを部下がいえるようにトレーニングすることができます。

②主体性を奪われて適応障害になるタイプ

人は自分自身の主体性を奪われたり、自己の尊厳が脅かされたり、大切にしているものを侵害されるとき、元気でいられなくなります。
そういう時、自然な反応として人は反発し怒ります。それでも、「仕事を失うわけにはいかない」「相手を怒らせるのも面倒だ」と思い、腹の奥底では怒りが込み上げきても、自分を押し殺して、生きるために波風を立てないように我慢します。

大抵のことには耐えられても、自分が一番大切にしていることやプライドをもって頑張っていることを踏みにじられるような思いを、何カ月も何年にもわたって味わい続けていると、その人の心は次第にエネルギーを失っていきます。

よりよい仕事をしようとか、自分を高めていこうという気持ちもなくしてしまい、ただ時間だけが過ぎていけばそれでいいと思うようになります。
この主体性を奪うのは何も職場だけでなく、親子関係や夫婦関係での一方的な支配や学校でのいじめなどの個人の尊厳を奪うような行為も同じで、適応障害やうつに発展することになります。
仕事や学業が面白くなくなるだけでなく、人間関係や人生そのものもつまらなくなり、ただ耐えるだけのものになってしまいます。
そのような状況を味わい続けることは、強いストレスになるだけでなく、それに耐え続けることが、その人を病ませることになっていきます。

主体性侵害型の適応障害を避けるために
本人の主体性やプライド、ペースといったものを、できるだけ侵害しない配慮を行い、必ず守ってほしい部分と、本人の選択で調節できる部分を明確にし、守るべき部分を最小限にします。
これだけは守ってほしいという点を伝えたうえで、後は、本人の自主性を尊重し、よい点や努力している点を褒めるスタイルでいきます。
そのうえで肝心な点が守られていない場合ややるべきことが果たせていない場合には、個別に伝える必要がありますが、他の人の前で恥をかかせたり、感情的に怒鳴ったりすることは絶対にしません。
注意するときも、丁寧かつ通常より少しトーンの低い声で、この点はやってほしいと伝えたと思う、と確認を求めます。それと同時に、相手に対するポジティブな評価や期待の面も伝えることも心がけます。

③振り回されて適応障害になるタイプ

上司のほうが部下をコントロールしきれずに、部下の言動に振り回されてしまうタイプを振り回され型と呼びます。

・反抗的で挑戦的なタイプの部下の場合
反抗的で挑戦的なタイプの部下の特徴として、プライドが高く、上司に対しても張り合おうとする点があります。
被害的に受け止めたりする傾向も強く、些細なやりとりから関係がこじれてしまい、下手をするとパワハラなどで訴えられることもあります。

反抗的で挑戦的なタイプのトラブルから身を守る方法
このタイプの部下とぶつかってしまいやすいのは、管理しすぎるタイプや、秩序や上下関係を重んじ、部下から尊敬されたいという気持ちが強い人が多いそうです。
まず絶対やってはいけないのは、こちらは上司だからと、権力を振りかざして力ずくで従わせようとすることです。
むしろ一目置いた態度をとって、本人の意見や考えをよく聞く態度をみせて、本人ならどうやるか、問いかけてみるといい場合があります。

ただ、こちらの判断まで左右されないようにすることも大事です。
一理ある点は積極的に評価し、また本人に任せてやらせてみます。いったん任せたら、あまり細々したことには口出ししすぎず、大きな目で見守るようにします。
このタイプの部下は、ある部分ではとても仕事ができ、使える人材であることも多いので、うまく扱うことができればあなたにとって優れた人材に変化します。

・過度に依存してくるタイプの部下の場合
急激に距離を詰めてくるタイプの人や、過大な尊敬を向けてくるようなタイプの人の場合にも要注意です。
相手が幻滅を感じると、手のひらを返したように攻撃的になったり、批判的になったりすることがあるからです。いつの間にか、あなたが悪者にされてしまうことも起こり得ます。

振り回され型のトラブルから身を守る方法
距離が接近しすぎないように用心します。個人的な相談をもち込んでくるようなケースでは、特に要注意です。
「いつでも相談に乗ってあげるよ」とか「私でよかったら話を聞かせてもらうよ」と無防備に相談に乗りすぎると、後で大変な思いをすることになります。
こうした場合には、「専門家ではないから」 「個人的な問題まではわからないから」と、少し距離をとっておくことも必要になってきます。

ストレスは相談できる人がいると軽減される

ストレスを乗り越える上で最も重要な鍵は「安全基地」を持つことです。「安全基地」はいざという時にいつでも頼ることのできる存在のことです。
なんでも話すことができる相談相手が一人いるだけで、自殺のリスクは半分に減少するといわれています。

適応力の高い人は、社内や家庭内、友人の中で助けになってくれる人を持っています。相談することでストレスを一人で抱え込んで潰されてしまうことを防ぐことができます。適応力はその人自身の力というよりも、どれだけ人の力を味方につけ助けてもらえるかにかかっているとも言えます。
(安全基地については以前のブログ「安全基地になるための条件」でも取り上げています。)

もし心のうちを話せる人が一人もいなかったら他のところに支えをもとめることになります。アルコールのように気分を楽にしてくれるものや気分が高揚する行為やオンラインゲームなどの疑似的な対人関係などにです。
依存性があるものを選択する傾向があるのは、それに頼ることができるからでそれがその人たちにとっての安全基地の代わりになっています。

でもそれはあくまでも「代わり」であってそこからは本当の安定は得られません。

「身近な人との関係で、特に家庭の中で安全基地を持てるかどうか」

なんでも話せる、自分の弱い面や未熟な面をみせても大丈夫な関係が、適応障害に苦しむ人たちには特に必要で、しんどい時にそうやって甘えられる存在が身近にいると、試練を乗り越えやすくなります。

当サロンでは適応障害で悩む方が「安全基地」を持てるように、またご本人を支えておられるご家族が「安全基地」となるためのサポートをしています。

あなたがもし独りで問題を抱える時があったら当サロン「頭心大」を思い出していただけると嬉しいです。セッションはオンラインでも対面でも承っております。無料カウンセリングは公式ラインから承っておりますのでお気軽にご連絡くださいませ。

最後に、リフレッシュ用に上高地のハイキング映像を作ってみました。よかったらコーヒーのお供にどうぞ^^(容量オーバーにならないようにショート動画にしています笑)

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