山に行きたくなる5つの理由

先日長野県にある槍ヶ岳に2泊3日でいってきました。
槍ヶ岳は標高3180mの高さで、登山口からの往復距離は約40kmです。(ちなみに富士山は約8.5kmです)
1日目は槍沢ロッヂ、2日目は槍ヶ岳山頂で初めてのテント泊をしました。テント泊用プラス遭難した時用の救急グッズを詰め込んだために20キロ近くなったバックパックとの旅でした(次回はもっと身軽で行くぞー笑)
帰った後2日ほど筋肉痛で小鹿のようにプルプルな脚だったのですが、1週間たってもなんともいえない充足感に浸れているのが不思議な感覚で、改めて自然の心身への効果を感じました。

今回は、いつもブログを読んでくださっているあなたにもこの心地よさをぜひ味わっていただきたいなーと思い、「山に行きたくなる5つの理由」を「NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方」からご紹介したいと思います。

1、森林のにおいの効果

森林のにおいの研究では、なんと韓国と日本の研究者が世界のトップを走っているそうです。
韓国国立山林科学院では、科学者たちが精油を抽出し、アレルギーの治療効果やブドウ球菌を殺菌する効果などを研究しています。
そうした研究を続けるなかで、低濃度の針葉樹の精油を皮膚に用いるとアトピー性皮膚炎に効果があることや、精油の吸入がコルチゾールの量を減らしてストレスをやわらげることや、喘息の症状を緩和することがわかってきています。
木の香りの成分である「フィトンチッド」には、日本のある研究によるとストレスを53%減らし、血圧を5〜7%も下げるそうです。
また自律神経を安定させる効果もあります。
わたしも今回登山に行く前日なかなか寝れず(遠足前の子どもみたい笑)2日間ほど睡眠時間が3、4時間ほどだったのですが、上高地に入って森の中を歩くにつれ頭がスッキリする感じがして森林の香りの恩恵を受けることができました^^。

2、森でテクノロジー依存症をなおす

自然の中に身を置くと、全身の筋肉と五感の全てを駆使する必要があるので、身体感覚が発達します。時として怖い思いや大変なことも経験しますがその体験はその先の自分への自信に繋がりになります。

「韓国でテクノロジー依存症のボーダーラインにいる11歳と12歳の子どもを対象にしたふたつの研究が実施され、子どもを森で二日間すごさせると、コルチゾール値が下がり、自尊心の評価が大きく改善し、その効果が二週間持続することがわかった。この論文の筆頭著者である忠南大学の森林環境・健康研究所の朴範鎮によれば、森ですごすと幸福感が増し、不安感が減り、将来について楽観的に考えられるようになるという。」
朴教授によると、「自尊心の高い子どものほうが依存症になりにくい」そうです。彼は自身の研究結果に基づいて10代前半の子どもたちに2週間に一度、半日以上自然の中で過ごすことを推奨しているようです。
「自尊心」という点では、例えばキャンプでファイヤースターターを使って火を起こせるようになったり、登山で悪路を進んで登頂できたり、滝に打たれてみたり、普段の生活ではトライする必要のないことにも挑戦することができる機会が自然には溢れているからこそ「自尊心」の評価が改善することに繋がるのかなと最近一緒に行った人たちを見て感じます。
テクノロジー依存症のボーダーラインにいる11、12歳の子どもたちの多くにとっては野菜よりジャンクフードのほうを好むと同じように、森の中で過ごすよりゲームをするほうがおもしろいと思います。
それでも、美味しい野菜を食べてそれが自分が楽しく遊ぶための体づくりに欠かせないものだと理解するようになるとだんだん苦なく食べることができるように、「自然のなかにいると気持ちが落ち着く」という感覚を、早いうちに子どもに植え付けることが大事になってきます。

「森ですごすと幸福感が増し不安感が減り、将来について楽観的に考えられるようになる」

これは子どもに限らず大人もそういえます。でもなんで森で過ごすと不安感が減り、幸福感が増し、将来を楽観的に捉えられるようになるんでしょう。
その点は5番目の理由「畏怖の念」の部分で取り上げます。

3、自然の音は飲み薬のようなもの

ペンシルヴァニア州立大学の生体行動健康心理学者ジョシュア・スマイスは音がどのように人間の気分を良くするのかという問題に関心を持ち、それを調べる研究を著者フローレンス・ウィリアムズに対して実施しました。
この実験では被験者にストレスを与えた後に、自然と車の音が両方流れるビデオを15分間見せます。
結果として、フローレンスは自然の景色を見ていると心拍数がすぐに通常の60台半ばまで下がりますが、トラックのエンジン音が聞こえるやいなや、心拍数は一気に10ポイント上昇します。 上がった心拍数が下がるまでにはやや時間がかかったものの、ふたたび静かな自然の光景を眺めていると、心拍数は50台半ばにまで下がります。

「音の景観は薬だと考えるべきだ」と、スマイスは言う。「飲み薬のようなものだとね。健康にいいからとみずからに運動を処方するように、公園のなかを散歩し、気持ちのいい音を聴く行為をみずからに処方するといい。毎日20分間の散歩を習慣にして、一生続けていく。ストレスにずかずかと侵入されたときに、対症療法として行なうのもいい。あなたの場合、ストレスを感じたら、とにかく静かな場所に行くのがいちばんだ」
スマイスによれば、ごく短時間でも自然に触れるようにすれば、いま脚光を浴びている瞑想などのストレス解消法より大きな効果が得られるそうだ。

先月クライアントの方と公園でセッションしていた際に、基地が近くにあったのかヘリの騒音で何度も話を中断されることがありました。みている景色は芝生の青々とした広い敷地で開放感満載なのに、ヘリの音が聞こえる度に落ち着かない感じがあったので、音ってすごく大事だなー改めて思った瞬間でした。
ストレスを感じるときは静かな場所に行ったり、外にすぐ出られない状況でも、ヘッドホンをして自然の動画を選んであなた自身のために、自然の音で「お薬タイム」を作ってみるのもいいですね。

4、1ヶ月に5時間で回復力アップ

フィンランド国立自然資源研究所の研究部門を率いるトゥルヴァイネンによる研究ではさらに興味深いことがわかっています。
都会に暮らす3000人を対象に、自然のなかで過ごしたあとの気分の変化とストレスの軽減について尋ねたところ、一か月に5時間、自然のなかで過ごすと、最大の効果を得られるという結果が出たそうです。

また、都心ではストレスから「回復」したという感覚はほとんど抱けず、いっぽう、整備された公園や森林公園のなかではそう感じた変化は比較的早い段階、例えば戸外で15分間座っただけであらわれたということです。
その後、短い距離を散歩すると、「回復」したという感覚がさらに強まり、その状態が持続します。緑がある場所ですごす時間が長くなるほど、気持ちが上向いたという報告が増え、その効果はより自然豊かな森で過ごした人のほうが高かったそうです。
また自然の中ではリラックスできただけではなく、活力度も上昇するそうです。活力を上げることができるのは、都心ではなく公園など自然のなかで過ごしたときだけで、それでも変化が起こるのに45分かかるそうです。 都心で過ごすと活力もストレスの回復度も低下し、逆に公園や森で過ごすと、都心で過ごすより気分が20%上向きます。
緑のある場所で過ごした人は、気持ちがポジティブになり、ネガティブな感情が減り、創造性も上がったと答えたそうです。
つまり町中の公園で15分から45分間すごせば、気持ちが前向きになり、活力が湧いて、ストレスを軽減できるということになります。
自然のなかで過ごす時間が長くなるほど、気分が明るくなります。トゥルヴァイネンによると、ストレスを軽減し、うつうつとした気分に風穴をあけるには「自然のなかで一か月に5時間すごすのが最低ライン。10時間すごせば、ますます爽快な気分を味わえるはず」ということだそうです。
ざっと計算すると、 一か月に5時間ということは、だいたい一回あたり30分程度を週に二回、青々とした木々の下ですごせばいい計算になります。
10時間を目標にするのであれば一か月に2、3日都会を離れ自然の多い場所に出かけると目標達成できます。
私自身も月に2、3日を目標にキャンプや海・山に行くようにしているのですが、たまに調子が悪いなと思う時は大抵、忙しくて「そういえば出かけていない!」と気づくときがあります。
自然が及ぼすメンタル・身体面の影響力って侮れないですね。

5、畏怖の念と心の平穏

アインシュタインの言葉で「わたしたちが体験できるもっとも美しいものは神秘的なものなのです」というのがあります。
人は「畏怖の念」や「畏敬の念」など自分にはそう簡単には理解できないものがあると、自己中心的な考え方がおさえられたり、寛大な行動を取る割合が高くなったり、俯瞰的な物の見方ができるようになることが研究によって明らかになっています。
また、カリフォルニア大学バークレー校のケルトナーらの研究チームが実施したもっとも興味深い実験では、こんなことがわかっています。

恐怖、怒り、よろこび、驚きなど、20種類のネガティブな感情とポジティブな感情を、この一か月で何度感じたかを尋ねた。
さらに被験者の唾液を採取し、炎症の指標となるサイトカインIL-6の値を測定した。
免疫系の一部で、細胞に情報を伝えるシグナル分子であるIL-6は、傷を治し、病と闘う際に威力を発揮する。
健康な人の場合、IL-6値は低いほうが良好とされ、慢性的に値が高いとうつ病やストレスの原因になって、筋肉の回復力も弱まる。数あるポジティブな感情のなかで、畏怖の念は唯一、IL-6の値を大幅に下げる感情と考えられている。

ケルトナーによれば、畏怖の念は人との絆を強め、それによって炎症がおさまり、ストレスがやわらぐそうです。
つまり、畏怖の念はだれかと分かちあえば、さらにいいということです。
数あるポジティブな感情のなかで、畏怖の念が唯一、傷を治し、病と闘う際に威力を発揮するIL-6の値を大幅に下げる感情だと考えられているのも興味深いですよね。
「畏怖の念」効果だったのか、実際に今回槍ヶ岳に同行した学生が2日目以降、私の20キロ近くの荷物を自分の荷物とチェンジしてくれました。おかげで撮影に集中しながら登山を楽しむことができました。
実際、山登りをしたことがある人は感じると思いますが、登山家の方達は狭い道をすれ違う時必ず挨拶をし、道を譲り合ったり、その先の道の情報を教えてくれたりなど本当に親切な方が多いです。
今回私たちも、クマが出た情報やのぼりでしんどくなっているエリアでは、もうちょっと頑張れば冷たい水がある場所に着くことなど、心折れそうな時に出会う方々が励みになる情報を教えて下さって本当にありがたかったです。
「畏怖の念」が自己中心的な考えを抑え周りを見る広い視野をもて結果、寛大さにつながるというのは私自身今回とても実感しました。

また「鳥肌が立つくらい」の風景を眺めると心拍数が下がる理由についてケルトナーと同校の大学院生アンダーソンの仮説もなるほどなーと思いました。
「見る人に畏怖の念を起こさせる風景には、たいてい情報がたくさん盛り込まれています。 広大な風景が広がっていますし、簡単には全体像を把握できません。だから、その環境の情報をきちんと入手し、整理しようとして、身体が少し落ち着くんです」

このアンダーソンの仮説は「森で過ごすと不安感が減り、幸福感が増し、将来を楽観的に捉えられるようになる」の話とリンクします。自分にはそう簡単には理解できないものに出会える機会が多い森で過ごすと、「畏怖の念」を覚えその情報を整理しようとして、身体が落ち着くことで不安感が減り、自己中心的な考えを抑え周りを見る広い視野をもてGIVEの精神が育まれるので幸福感が増し、人との繋がりや絆もしっかりしていき社会性も育まれるので、独りで悩むことなく将来を楽観的に捉えられるようになることに繋がっていくように思います。

個人的に今回槍ヶ岳に登っている時に、一番感銘を受けたのは登山中に年配の方と出会う確率の多さです。
2泊3日の1泊目はお風呂のある槍沢ロッヂに宿泊しましたが、そのお風呂場でたくさんの素敵なおばちゃまたちと知り合うことができました。
15年前に槍ヶ岳に来て息子と感動した頂上の景色を今度は娘と孫に見せたいと嬉しそうに話して下さったり、次から次に60歳越えのシニアの方々がいらして腕が上がらないなどお悩みはあっても登山を楽しんでおられる姿を見てなんだか感動しました。

年齢を重ねても挑戦し続ける人たちのエネルギーが素敵で自分もそうありたいなと思いました。

いろんな科学者が自然が健康に与えるいい影響をデータとして証明していますが、槍ヶ岳に来て改めて自分自身もそうですが、そこにくる方々を見て、自然に触れるために出かけるのは気分が良くなると「実感しているから」なんだなーと感じました。
”自然保護の父”と呼ばれたジョン・ミューアの言葉の通りですね。

”Going to the Mountains is going Home”
「山に行くことは家に帰ることである」

上高地から槍ヶ岳に向かう道のりは、一歩一歩進む度に景色が変わってその美しさと雄大さに鳥肌が立つくらい感動するので、「生き返らせてくれる場所」というのを実感できます。
自然で心身のメンテナスをするのに、あなたもまずは1ヶ月に5時間(30分を週に2回)、オススメは月に2、3日都会を離れ自然と触れ合う機会をつくって、自分のカラダで「気分が良くなる」ことを体験する生活を取り入れてみるのはいかがでしょう^^

当サロン「頭心大」では公園や川や森に出かけての野外セッションも随時開催しておりますので気になる方はお声かけくださいませ♪

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