パニックに対処するー自分をコントロールする3つの方法

人前で話すと緊張して不安になる、学校や職場に行くと緊張する、人前で食事するのが苦手。。。

私たちだれしも大なり小なり、苦手なものやアレルギー反応を起こすものパニックになるものがあると感じる人は少なくないと思います。

また日本人には視線恐怖症の方が多いようで、周りの視線に敏感で相手の目線で不安や緊張を感じ、それが自分自身のパフォーマンスに影響を与えることもあります。

家庭や学校・職場で失敗したりネガティブな経験があると、その時と似たような状況になると不安で息苦しくなったり、動悸や冷や汗や吐き気、身体の震えが止まらないことで悩む方もいらっしゃいます。

パニックの発作で怖いのは自分で自分の状態をコントロールできないことにあり、逆を言えば、自分をコントロールでき暴走を止めることができるのならパニックに対処できるようになります。

それで今回は日常生活で緊張状況やパニックになりそうな時にコントロールを取り戻すために役立つ方法をご紹介します^^

パニックになりやすい人の思考パターン

実はパニックになりやすい人には特有の思考パターンがあります。それを破局的思考と言います。

破局的思考とは、ごく小さな悪い兆候から最悪な事態を想定して「もうダメだ」と絶望的な結論に陥ってしまうことです。大したことがないものでも極端に悪い方向に解釈してしまうので自分で自分を追い込んでいく、本人が意図しなくても無意識に悲惨な考えが浮かんでしまう“思考の癖”とも言えます。

最悪の状況を考えることで焦って自分をコントロールできなくなると感じ、極度の不安から実際に体調の異変や失敗を引き寄せていることもあります。

この破局的思考に陥る一つの要因として、心の視野が狭くなる視野狭窄があります。もう少し大きな視点でみればそれほど思い詰めなくていいものでも、心の視野が狭まっているため、悪いこと、ネガティブな部分しか目に入らなくなってもうダメだと思ってしまいます。

なので、「脱破局的思考」に有効的なのは、心の視野を意識的に広くとることです。

コントロールを取り戻す3つの方法

パニックとは対処できない状況に対する過剰反応とも言えます。私たちは日々、自分にはどうしようもできないことと出会いますが、自分ではなく誰かに任せられたり、もう少し後で着手できるものだと余裕ができるのでさほど問題にならなくてすみます。が、「今すぐ」「自分が」なんとかしなければ大変なことになると思うと、不安でたまらなくなって苦しくなります。

コントロールを取り戻すためにどうしたらいいでしょう?具体的な方法が3つあるのでぜひ参考にしてみてください。

①視野を広く

自分をコントロールする上で役立つ1つ目のポイントは「視野を広くとる」ことです。これは周りをよく見るということです。
顔を起こして、ゆっくり周囲を見渡します。相手の反応や周囲の状況を観察するように目を動かし、しっかり見ることを意識するとだんだん冷静になっていく自分に気がつくでしょう。

逆に悪い反応の仕方は、いまの苦しさや不安にばかり注意をとられ、周囲をきちんと見られなくなってしまうことです。
冷静さを保つコツは、周囲の状況を客観視することです。そのために、私たちが心がけたいポイントは、自分の反応ではなく、周りを見るということです。

人からどう思われるのかということに必要以上に敏感になっている場合、自分の一挙手一投足に、評価する他人の視線を感じてしまい、まるで視線という蜘蛛の巣の糸によってがんじがらめにでもされたかのように、自然で自由な動きを奪われてしまい、思考さえもいつもの自分らしさを失ってしまうことがあります。

もがけばもがくほど、普段ならしないアホな失敗をしてしまい、失笑や嘲笑といった反応が起きると、さらに狼狽し、平常心を失ってしまう。。
ここでポイントになるのは、緊張とともに視野狭窄が起きてしまうということです。悪いプロセスにはまり込んでしまうかどうかの分岐点は、ネガティブな状態になっている自分に意識が全部持っていかれるか、それとも、自分の感覚よりも周囲のことに注意を配分できるかどうかという点です。

つまり、ある程度緊張したとしても、失敗や混乱の渦にのまれないためには、注意を周囲に配分し、自分の感覚ばかりに向けすぎないことが大事になってきます。
スピーチをうまくこなす人でも、まったく緊張しないという人はごく少数です。緊張しながらもうまくこなせる秘訣は、意識して周囲に注意を向けるということです。

「できるだけ周りを見る」

「 ゆっくりと聴衆や周囲を見渡す」

「話しかけやすそうな人、好感がもてそうな人を見つけ出して、その人に語りかけるように話す」

というのも良い方法です。そうすることで、自分の方に意識が向かいすぎるのを防ぐことができます。

パニックになりやすい人は、「見られている自分」という意識が強すぎる場合があります。見られているという意識が、自分らしくふるまう自由さを奪ってしまうのです。
そうなってしまった原因は、学校や家庭、所属する何らかの団体や職場などでいつも厳しい目で見られ、ありのままの自分を認めてもらうよりも、良いか悪いか、優れているか劣っているかといった視線で評価されることが多かったという状況に長年置かれていたこととも関係があります。そういう環境で育つと評価されることを意識して、良い自分、優れている自分を見せなければという力みが生まれ、それが、自然に自分らしくふるまうことを妨げてしまいます。

この呪縛を解くためには、「見られている自分」という意識と結びついた、「低い評価(笑われること、貶されること、期待を裏切ること)への恐れ」を打破する必要があります。
「見られている自分」を「見ている自分」へ、評価するのは他人ではなく、自分だという視点への転換が必要になります。
また、低い評価を恐れるのではなく、低い評価を受けても負けないことこそが格好いいことであり、笑われたり貶されたりするものこそ真の価値があるのだという価値観の転換も必要になります。実際、社会を変えてきた偉人たちも批判や嘲笑を受けてきましたが、それに屈せず新しいことに挑戦してきたので、その恩恵に私たちも預かっています。

この自分に対する評価を、他人軸から自分軸へ転換する上で役に立つのは「セルフ・コンパッション」というものがあります。自分軸に切り替えたとしても肝心の自分自身が自分に対して鬼のように厳しいなら元も子もないですよね。。セルフ・コンパッションでは「愛する人に対する思いやりや、労りと同じ気持ちを自分自身にも向け、状況に関わらず自分を素直に受け入れること」をトレーニングしていきます。このセルフ・コンパッションについてもっと知りたい方は当サロンでセッションを行なっているのでお気軽にご相談くださいませ^^

話を戻して、長年使い込んだネガティブなところだけに焦点を当てるレンズを外して、広角レンズを手に入れるためには、

「低い評価」=価値がない自分

という思い込みから卒業し、「低い評価」にあっても諦めずに行動しつづける先に真の価値があることを自分に言い聞かせること、

自分自身が自分の味方になって「低い評価」という攻撃から自分を守っていく必要があります。

②ゆっくり行動し、ゆっくり呼吸する

コントロールを失いかけているときに有効な対処方法の2番目は呼吸を整えることです。

交感神経が緊張すると呼吸数は増えるため、自覚のないうちに、いつのまにか過呼吸になってしまいがちです。
過呼吸は、血液中の二酸化炭素濃度を低下させます。血液は、二酸化炭素によって、軽度の酸性に保たれているので、過呼吸になり二酸化炭素が減ってしまうと、アルカリ性になってしまいます。その結果、息苦しさやしびれといった異変を感じ、それがよけい不安を強め、冷静な思考が保てなくなってしまうという現象が起こります。

こうした悪循環を防ぐためには、呼吸を意識して、ゆっくりとしたものにする必要があります。しかし、実際のところ呼吸だけを意識してもうまくいかないものです。呼吸は体に起きている生理的な現象なので、ゆっくりしようとするなら、体そのものの動きもゆっくりとしたものにする必要があります。

能楽師になったような気持ちで、ゆっくりと動作すると、自然とゆっくりとした呼吸が生まれます。過呼吸は息を吸いすぎることによって起きるので、吐くことを意識して行うのがポイントです。ゆっくりと時間をかけて息を吐くようにする。そのとき、少し力を抜くようにする。また、口ではなく、鼻で呼吸するようにします。呼吸が止まっているくらいの感じで、眠っているときのように静かにゆっくり呼吸してみます。
過呼吸気味になっているときは、吸い込んだときに5つ数えて、その間呼吸を止めると、早く二酸化炭素の分圧を上げることにつながり、落ち着きを助けます。おなかに手を当てて、意識的にその動きを感じるのも呼吸を整えるのに良い方法です。

③対処行動と言い聞かせる言葉

コントロールを取り戻すための3つ目の方法は、「対処行動」です。ほんの小さなことでも、自分の意思で行動し対処しているという感覚が、コントロールを取り戻すことにつながります。メンタルヘルス用語ではコーピングとも言います。

コーピングは、ストレスを対処するための行動を指します。 英語では「coping」と表記され、「問題に対処する、対応する」という意味の「cope」から派生された言葉です。 ストレス要因の解決もしくは負担を減らすことを目的として、問題に対して何かしらの行動を起こすことを意味します。

パニックは、自律神経系の反応をともなう情動反応なので、体の反応には体の反応で対抗した方が有効な面があります。 コーピングをあらかじめ練習しておいて、実践の場で活用すると、パニックになったり混乱したりするのを防ぐことに役立ちます。

まず、自分に言い聞かせる言葉をかけてみましょう。それをするだけで自分と少し距離をとり、自分自身を客観視しやすくなるので、落ち着きを取り戻す一歩につながります。

「落ち着こう。よく周りを見て。ゆっくり動いて。ゆっくり呼吸して」

という感じに、一つ一つ自分に指示を出します。
自分に言葉をかけながら、コーピング(対処行動)をとっていきます。②で出てきた呼吸法もどこでもできる有効的なコーピングになります。
それ以外にも、手を握り締める、それを緩める、両手を組み合わせて同じことをする、自分の体(心地いいと思う場所、お腹・鎖骨・首・頬・手・腕)をてのひらで温める・さする、お気に入りの香りを持ち歩いて嗅ぐ、冷たい水を飲む、といったコーピングもあります。

コーピングの効果で個人的に心に残っているのが、スラムダンクのある名シーンです。スラムダンク(映画バージョン)好きの人にしかわからない内容になりますが、山王戦の前日にバスケット選手のリョータとマネージャーの彩子が話をするシーンの中で、「辛くなった時は手のひらを見よう」という約束をします。「手のひらを見る」というのは、強豪相手との試合前で焦るリョータに彩子がつくってあげたコーピングになります。

試合当日、チームが劣勢に追い込まれた中での作戦で、切込隊長として期待されるリョータですが、その彼も強豪との試合で疲労はピークに達しています。そんな中試合の途中で彩子がリョータの手に、「No.1ガード」と書きます。それを見たリョータはやる気と気合を入れ直し、見事期待に応えることになります。No.1ガードの字は、試合中の辛いタイミングで、リョータを救います。

私たちも自分がどういう状況でしんどくなるのか、パニックになりそうなのか予測できるなら、その時にできるコーピングを決めておくことができます。そして実際にやってみます。

自分の意思ですることによって、自分自身をコントロールしているという感覚を取り戻すことができ、暴走している自律神経系の反応にブレーキをかけることができます。

例えば、人前で話す時に緊張するという場合にはこんなコーピングがあります。

・顔を上げて聴衆を見渡す。
・一人ひとりの顔を観察してみる。
・笑顔を浮かべる。
・肩を上げ下げしたり回してみる。
・手を握ったり開いたりする。
・深く吸った息をゆっくり吐き出す。
・手の甲をさする。
・冷たい水を飲む。
・足を動かしたり手遊びをする。
・体を軽くたたく。

↑これらの行動は、すべて緊張を和らげるのを助けてくれます。自律神経系の反応は、自分ではコントロールできないと思いがちですが、実際には、行動すること、刺激を与えること、呼吸を整えることでコントロールできますし、あらかじめ練習しておくと、さらに上手にコントロールできるようになります。

自分の人生をあきらめない

ドトールコーヒーの創業者である鳥羽博道氏は、 対人恐怖や赤面恐怖に悩んだ一人だったそうです。コーヒー製造会社に就職して、任されたのがコーヒー豆の営業だったそうですが、赤面恐怖に対人恐怖がある鳥羽氏にとって飛び込みで訪問した先で、初対面の客に言葉巧みにセールスするといったことは、もっとも苦手とするところだったそうです。
いっこうにコーヒー豆も売れず、何度も辞めようかと思いながらも逃げ出すのは嫌だと、どうすればいいのかと思い悩んだ末、鳥羽氏は、上手にセールストークをするよりも、お客さんのためになることをしようと発想を変えます。店が忙しいときに手伝ったり、使い勝手がいいような小物雑貨を買っていったりします。
そんな努力が実って、鳥羽氏は営業成績トップにのし上がり、結果的に「顧客目線に立った店作り」という鳥羽氏のその後の成功をもたらすコンセプトにもつながっていったそうです。

対人緊張が強い人には、親が厳しかったり、押さえつけられて育っていたりする人が少なくありませんが、鳥羽氏の場合も、母親を早く亡くしたうえに、横暴な父親の顔色をうかがいながら暮らすという状況が、対人恐怖に関係していたと思われます。
しかし、鳥羽氏は対人恐怖の症状に縛られ、自分の人生を諦めるのではなく、そうした症状を抱えていても、生きるために逃げるわけにはいかないと、自分なりにできることを考えて努力し続けました。
逃げずに踏ん張り続けたことが、結果的に成功をもたらしただけでなく、症状を克服することにつながったともいえます。

過去の生い立ちや環境を変えることはできませんが、その状況で培われた自分のセンスを強みに生かすこともできます。
この秋の時期山を歩くと、紅葉という素敵なショーを見ることができます。圧巻でもありどこか切なさも感じるこの光景は私たちの心を動かしますが、実は樹木たちの自己防衛の成果でもあります。

樹木そのものが、自らのうちにある水分を保つために、色を変えカラダの一部である葉と別れをつげます。落葉樹の幅の広い葉からは大量の水が放出されるため、新たに水分を補給しないと、それらの葉はやがて樹木から水分を奪ってしまいます。冬期になると、凍った地から必要な水を得ることはできなくなります。なので樹木は十分な水分を得ることが難しくなる冬の前に葉を落としていきます。

10月初めになると葉との別れの準備が始まります。枝に付着している箇所の葉の細胞たちと枝の間には、コルクに似た層が成長し始めます。その成長によって葉に向かう樹液の流れは止められますが、さらに2週間たたなければ落葉は始まりません。秋が燃え立つように美しくなるのはこの時期です。樹液が運ばれてこないので光合成は中止され、葉の中の葉緑素は日光によって破壊されます。

緑色が消えて、もともと葉の中にあった色素がスポットライトを浴びるようになります。それが結果的に私たちの目を楽しませる色に成長しています。ある植物の中ではアントシアニンができる際に日光の影響を非常に受けやすいため、日光により多くさらされているとより鮮やかな赤に変化します。

この素晴らしい光景は私たちが住む日本ではわりと身近なものですが、どこでも見れるわけでなく、地球上で条件がそろう限られた地域だけです。

この紅葉のシステムは、ある意味私たちが育った過酷な環境で培った自己防衛が必ずしもネガティブに働くわけでないことを教えてくれる気がします。
冬という試練に耐えるために樹木が犠牲を払うとき、もともとあった色素が顔を出し、それが燃えるような色として人々の心を動かすように、私たちがもうすでに持っている資質が力強く動き出すときがあるということです。
なので、自分の人生をあきらめないで生きましょう。あなたがもうすでに持っている素敵な資質が表にで、経験してきたことがすべて無駄に終わることなく、冬のような時期もその後に続く春や夏のシーズンにつながっていくことをどうか忘れないでいてください。

先日福島県の秋を五感で楽しむことをテーマに旅してきました。1本1本の木々が環境や受けるストレスによってそれぞれの色を出していくその様や自己防衛のために葉を落としていく姿が、日本という国の中に流れる歴史や文化と似たものを感じました。樹木たちのその生き様にめちゃくちゃ感動したのでその旅日記を動画にしてみました。よかったら見てください^^

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