安全にトラウマを癒すコツ〜パーツ編〜

前回からトラウマから安全に癒やされていくために必要なことを考えていますが、そのためには「TKS(T: サーモスタット K:カンガルーS: スパークリング・炭酸水)」自律神経系のバランスを整え、トラウマによる閉じ込めた防衛反応を安全に完了させ、自分の内面に安定型愛着関係を築くことがポイントでしたね。

あれ、なんだったっけ?と思われた方、、、大丈夫です笑 ブログの内容のベースにさせていただいている神経セラピストの浅井さんの著書「いごこち」神経系アプローチ 4つのゾーンを知って安全に自分を癒やすの著者メッセージを動画にした部分だけでも、もう一度見ていただければ、あーあれかっと思い出していただけるかと思います笑(前回のブログ→「安全にトラウマを癒すコツ〜自律神経のクセを知ろう〜」)

安全に自分を癒すベースになる自律神経のバランスを整える方法を「サーモスタット機能」から前回学ぶことができたので、今回はサバイバルのエネルギーを安全に解放し、閉じ込められている防衛反応を完了させる「炭酸水」と自分の内面に安定型愛着関係を築く「カンガルー」について学んでいきたいと思います。

サバイバルのエネルギーを安全に解放し、閉じ込められている防衛反応を完了させる内容については、以前のブログのフラッシュバックを減らす:「今に意識を向ける」トラウマを受けた人に伝えたい7つのことなどでも扱っているので、今回はさらっと復習する感じで、メインは自分の内面に安定型愛着関係を築く「カンガルー」について考えていきたいと思っています。このカンガルーはパーツ心理学に関連するところなので、今セッションされている方には、今やっている内容の意味づけにもなるかと思います。

炭酸水:未完了の防衛反応に働きかける

サーモスタット機能では、自律神経のバランスを整えることがポイントでしたが、ここでは神経系に残っている防衛反応(たたかう・逃げる・凍りつく)を完了させ、「やった!できた!生き残った!自分はすごい!」といった誇らしい感じを味わうことが目的です。

日常レベルでの(交感神経の緊張や興奮の)発散を心がける

発達性トラウマを抱えている人が事件や事故などに巻き込まれると、元々神経基盤が安定していない状態で大きなショックも重なるので複雑な症状に発展していることもあります。そういう場合は、炭酸水の出番です。

振られた炭酸水をこぼさずにゆっくりゆっくり蓋を開けるのをイメージしてみてください。ちょっと捻ると勢いよく飛び出そうと外に向かってきそうなエネルギーがあることに気づきます。もう少し捻ってプシューっと炭酸が抜けていくのを感じます。音の勢いがちょっとずつ弱まっていくのを感じてもう少しずつ捻って開けていくと、中身が吹き出ることなく、炭酸の勢いを上手に逃すことができます。

それと同じように、日々の生活の中で少しずつ体に閉じ込められている高い緊張や興奮を解放して、その強烈さを緩和させてあげます。「今ここ」にいる感覚を少し感じられるようなエクササイズ、体を動かすことを、圧倒されないくらいの時間や強度でできるように自分の心や身体と相談しながら、また専門家の方のアドバイスを受けながらやってみることをお勧めします。

プチプチ潰しや、紙を破る、ペットボトルをくしゃっと潰したりもできます。私は自分の中の炭酸が飛び出しそうになる時は、大きな声を出しながら振動マシンに乗ったり、テンポの良い音楽を聴きながらピラダンス(ピラティス✖️ダンス)をして、とにかく身体を動かすと自然と溜まったエネルギーがうまく逃げていってくれます笑

急発進・急ブレーキが少なくなると滑らかな運転が可能になるように、「サーモスタット機能」が安定し、リソースをうまく使えるようになると、覚醒レベルが安定して、頑張りすぎず、でもやる気も維持できるような状態になっていきます。

そうすると自分の中から出てくるような炭酸のような衝動にも気づけるようになります。それに対して自分にあった対処法を適応させます。勢いよく飛び出しそうな場合は、一度キャップを閉めて再度ゆっくり開けるように、一つのリソースだけで対応せずに、いくつかの切り替えが必要な時もあります。

気づくことができたらミッション半分成功です。自分の状態に気づけること自体、俯瞰的に状況を捉えられている証拠でもあるので、ケアしやすくなります。

カンガルー:自分のセラピストになる

ここでは、まず自分の反応・感情・思考が過去からの「自律神経系のクセ」であると認識できることが最初のステップです。この「自律神経系のクセ」とはあなたを困らせている「いつものあのパターン」です。「自分には価値がない」「大事にされてない」「自分の欲求より他者を優先しなくては」などは今の思考のように見せかけて、実は過去を生き延びた名残です。

これらが、トラウマを受けた時に自分を解離(パーツ化)させることで自分を守ってきた適応策だということに気づいてあげます。

一人の人のなかに複数の人格の人が存在する解離性同一性障がいは、その断片化されたパーツたちがそれぞれ人格を持ち意識の外で活動してくれています。その他にも、認知の歪みや否定的な思考、自己批判や自己嫌悪などは、この断片化によるものが多いといわれています。話に連続性やつながりがない場合も、様々なパーツが出たり入ったりしている兆候ということになります。

自分のなかの矛盾や葛藤に取り組むのに「パーツワーク」、「パーツアプローチ」と呼ばれるやり方があります。これは、自分の思考、感情、感覚、言動などを自分の一部分(パーツ)として、気づきを向けながら、自分のなかに「内面での対話、協働、協調」を成立させていくというものです。それぞれのパーツたちを排除したり、牽制しあったりするのではなく、チームとして活動できるように統合させていくのが、私のセッションでも行っているパーツワークになります。パーツワークをするようになって、消えそうになってた自分から、カラーの自分の存在に気づけるようになったというクライアントの方もおられます^^

過去の後遺症・名残とも言える「自分には価値がない」「自分は愛されない」「自分は欠陥品だ」といったスキーマに働きかけるために、カンガルーの親(いごこちの自己)でいられるようトレーニングし、カンガルーの子どもたち(パーツたち)になぐさめや思いやりが届く状態、つまり自分自身が「自分のセラピスト」になることが最終目標になってきます。

・カンガルーの親を育てる

「自分のセラピスト」になるためには、まず自分の中の「カンガルーの親を育てる」ところから始めていきましょう。最初は子どもたち(パーツたち)の状況を把握できていない状況なので、まず今は大人で、虐待などが起きた過酷な環境とは違うと認識できるような「レスキューレシピ」を作ります。

今が過去とは違うと思い出させてくれる「レスキューレシピ」の例をあげていますので、ぜひあなたも自分用の「レスキューレシピ」を作ってみてください^^

・サバイバル状態の統制を日常で練習する

サバイバル状態の統制をするには思っている以上に毎日の反復が必要です。普段は仕事や家事などもなんなくこなし、一見大丈夫そうに見えても、アタッチメントにまつわること(自分は大事にされない、愛されない、価値がない、欠陥がある、壊れている、劣っている、無能だ、恥ずかしい存在だ、いらない存在だなど)が刺激されると、急に調子をくずして豹変し、 攻撃的になったり、 退行して不安定になります。そのつらさを一時的に軽減させようと自傷や嗜癖などの行為をして何とか自分を保とうとすることもあります。
「カンガルーの親」でいられる時間を少しでもキープできるように、毎日できることを積み重ねていきましょう。そして、「サーモスタット機能」を続けながら、トリガーされた(触発された)と思ったら次の3つをぜひやってみてください。

1.「これは自律神経系のクセです」 と言ってみる
2.五感を働かせる
3.レスキューレシピを何か試してみる

この3つを意識的にすることでアタッチメントや自己価値に関わるネガティブなぐるぐる思考の渦に巻き込まれていない時間を少しでも長く確保できます。そうやって、もう自分は無力な子どもではないこと、自分で生きる環境を選ぶ権利があることを自分に認識させてあげてください。パーツたちは愛着に関わることで敏感に反応します。それで「いごこちの自己 (カンガルーの親)」 が自分の中に常駐できるようにむりなく毎日できることをやってみましょう。

「いいこと、感謝すること」を書くことが難しければ、「ましなこと、大丈夫だったこと、ゆるせること」でもOKです。これを毎日続けていると、リフレーミングのトレーニングにもなります。リフレーミングとは、認識の枠組み、つまりフレームを少し変える(視点を変える)ことによって行き詰まった状況を打破し、より理想な状態に向かうことを可能にするテクニックです。

リフレーミングが習慣的になると、ものごとを多角的に捉えたり、柔軟に捉えることができるようになるので、思考の幅が広がり、世界観をガラリと変えることができます。

「過去にはなかったかもしれないけど、自分には今こんなに助けがある、やさしい人たちは普通にいるもんだな。」
というふうに今までは全てが敵のように思えた世界にも味方がいるといった気づきが得られることもあります。

もしカンガルーの親である「いごこちの自己」が危うくなる場合はとにかく「サーモスタット機能」に戻りましょう!

発達性トラウマとうまく付き合っていくというのは、今まで受け入れられなかった自分のいろんな側面を自分のものとしていくプロセスです。リフレーミングの習慣を身につけ、どの色も欠けることなく自分のカラーとして認めていく作業になってきます。それにはどうしても時間が必要なので根気よく毎日少しずつできることにトライしていくのがコツです^^

・防衛パーツたちを認識する

ここでは「防衛パーツ」たちとよんで、いわゆるインナーチャイルドとも言われている「傷ついた子どものパーツたち」(どちらもカンガルーの子ども)を守る、という役割に気づいていきます。特に下記のパーツたちはデリケートなので慎重に扱ってあげましょう。必要であれば専門家の助けを借りることもおすすめします。

1、治療抵抗を示すパーツ
私たちの体には恒常性(homeostasis)という一定を保とうとする機能があります。例えば、体温はイメージしやすいと思います。この夏の暑い時期でも、冬の寒い日でも36度前後をキープしてくれています。命を守るために本当に大事な機能です。

実は私たちの思考や行動もこの恒常性機能が働いています。自分に役立つもの、新しいスキル、 (セラピストなどとの) 関係が深まることで、これまでの恒常性が変化してバランスが崩れてしまうことを怖れています。なにかを新しく試すとき、たとえそれが健全なものでうまくいってるなーって時に躊躇や抵抗として現れてくれます。例えば、「サバイバル状態の統制」練習をさせないように邪魔してきたりもします笑 でもそれは、ある意味防衛パーツさんがあなたを守ってくれてきた証拠でもあります。

もしセラピストと取り組む場合は、変化に対してブレーキがかかっているようなとき、今まであなたを守ってきてくれていたこの防衛パーツの勇敢な働きに敬意を示してくれるような理解のある専門家の方を選ばれることをおすすめします^^

2. 「いじわる」パーツ、加害エネルギーを持つパーツ
自分が受けた苦しみや不平等だと感じる経験から他者の幸せや喜びを妨害したり、他者が困ることを喜んだりします。誰でも程度の差はありますがこのパーツは存在します。ただ、深刻さが増してくると、意識的にも、無意識にも周りの人を罠にはめたり傷つけたりしてしまうので、「要注意人物」になっていたり、「かかわりに気を付けよう」と距離を置かれてしまう原因になります。
後天的なものとして考えられている「ソシオパス (反社会性パーソナリティ)」 のようなパーツも、ひどく傷つけられた経験から幼いパーツを守っています。 

3. 自己批判、自己嫌悪パーツ
2とは対照的で、自分自身に攻撃ベクトルが向いていて、日本ではこのタイプの方が多いように感じます。出る杭は打たれる環境の中で、このパーツがいることで守られてきました。自分を小さく見せること、相手より低く見せることで生き延びることに貢献してくれたり、自己批判することで成長させようとしてきてくれていたこともあります。しかし逆にこのパーツたちが幅をきかせるようになると、今度は、自傷したり、自己破壊行為をしたりしてこの苦しみを終わらせようとするパーツを発動させることになります。

・トリガー (引き金) とトラウマ的アタッチメントとの関連性を理解する

自分を守ってくれるはずの人と危険な人が同一の場合(保護者・先生・コーチ・コミュニティの大人たちなど)、愛着を求めるととたんに防衛が稼働するというのがトラウマ的アタッチメントです。悲しいことに他者からの愛情・優しさが逆にトリガー (引き金)になってしまいます。

すると、親密な関係はもちろんですが、職場や友人などの関係でも、些細なことがトリガーとなり穏やかさや安定を欠いたものになってしまいます。

・愛着パーツが触発され、「守ってもらえる」「大事にしてもらいたい」という幼いパーツのあこがれが増幅する

・相手を信じ頼ることで無防備さと脆弱性を感じるようになったたたかう防衛パーツが、警戒感を高める

・たたかう、逃げる、凍りつく、服従するなどのパーツがその防衛を行使する。

・そして関係が破綻し、愛着パーツが打撃を受ける
という流れを繰り返す

出典:「いごこち」神経系アプローチ 4つのゾーンを知って安全に自分を癒やす

「サーモスタット機能」で安心をちょっとずつ神経系に導入していくとともに、このパターンにはまる前に、強化された「いごこちの自己(カンガルーの親)」が発端となる愛着パーツとの癒やしの関係を築いていくことが必要なステップになります。

・防衛パーツたちを労う

次は今まで自分を守ってきてくれた防衛パーツたちに「いごこちの自己(カンガルーの親)」から慰めや労いが届くようにするステップです。

1. 治療抵抗を示すパーツ
命を守るために一定をキープしようとしてくれている彼らの懸念を聴いてあげて、共感し、信頼を得るということが大事なプロセスになります。そして「何を心配しているのか?」を聴いていきます。「セラピーで自分が成長して内面も大人になったら、他者の世話をするのではなく自分と向き合わなくてはならないから」、「自分を抑えて続けてきた関係性を終わらせてしまうことになるから」、「元気になったらまた無理をしそうで怖いから」「人に心配されていることで自分の存在を認識できるから」など心配してくれていることがよくあります。

2.「いじわる」 パーツ、加害者エネルギーを持つパーツ
彼らは幼いパーツを守ろうとしてくれています。今までたくさん人を傷つけてきたので自分は許されないと思っていたりもします。しかし、存在を認知され、感謝され、「いごこちの自己」を信頼できるようになると悪役でいる必要がなくなり、純粋に幼いパーツに愛を提供できる庇護者に変化してくれます。
「サーモスタット機能」の神経基盤がある程度できたら、その存在を認識して、「ずっと、いてくれているんだね」と、ただ気づきを向けてあげましょう^^

3.自己批判パーツ、 自己嫌悪パーツ
彼らにもまずは今までの働きに敬意と感謝を伝えてあげます。そして当時必死で守ってきてくれた子どもは、おかげさまで今では立派な大人になっていることを伝えます。その大人になった環境で、自己批判や自分を小さく見せることが役立っているときはいつか、少し力を緩めても大丈夫なときはいつか、を一緒に検討し、交渉していきます。必要な時には働いてもらい、他の時には後部座席でゆったりリラックスしてもらうということを提案していきます。

この防衛パーツたちの背景を少し洞察し、過酷な環境の中で生き抜くために自己を守るという素晴らしい動機で今まで働いてきてくれたことを知ると、彼らに対する認識がリフレーミングされていきます。
ある程度「いごこちの自己」が強化されたら、閉じ込めたり、追いやったりしてきた一つ一つのパーツたちの名前を優しく呼んで、リビングで円になって座ってもらうのをイメージしたり、心のスペースを広げるために、みんなが入ってこられるようにリビングを整えるために少し時間を作らせてもらえるように、パーツたちに今だけ少し後ろに下がってリラックスして待機してもらうのをイメージするという方法もあります。

どのパーツも排除したり、消去したりしません。押入れに閉じ込めたりもしません。パーツたちの働きのおかげで生き延びてこられたことに感謝をし、たとえアプローチ方法に多少難があったとしても、その肯定的な意図(動機)に「いごこちの自己(カンガルーの親)」から敬意が示されるようにしてあげます。

私の場合、普段は冒険家などポジティブパーツたちがリビングを占拠しているイメージで、防衛パーツたちは自分の部屋からあまり出てこない、というか出てきたらダメだと思い込んでいます。それであえて悲しい映画を見たり、しっとり物事を深く考えられそうな音楽を聴いて、防衛パーツたちの居場所を確保した上で「出てきてもいいよー」と声をかけて、彼らの話を聴く時間を意識的に作るようにしています笑

・カンガルーの親子の関係をよくする

幼い子どものパーツたちの時間は当時の大変だったときでストップしたままです。なので、現在の成長した「いごこちの自己(カンガルーの親)」の存在を教えて、今いる場所に連れて行ってあげましょう。そのためには、親子対面がうまく行くように、親がある程度安定している必要がありますよね笑(子どものパーツたちは当時の問題を抱えたままなので)

それで、一つ前のステップである「いごこちの自己」を強化しておくことが、良好な親子関係に発展できるかの要になります!もし親である「いごこちの自己」が不安定なら、子どものパーツたちから安心できない親として認識されてしまって信頼されないですよね。

信頼され、安心できる親として認めてもらうためには上記で挙げた「カンガルーの親を育てる」「サバイバル状態の統制を日常で練習する」「防衛パーツたちを認識する」の反復がどうしても必要です。「現在」の大人の自分が、「過去」の安心や癒やしのリソース(資源)の少ないところにいる子どもに会って、「現在」に連れてきて、今の環境での大人のあなたから共感、思いやり、受容を向けてあげます。

・まずは幼い子どものパーツに、その存在を知っていることを伝える
・そのパーツに何か聴いて欲しいことはないか、尋ねてみる
・共感を伝え、今は大人の自分が一緒にいることを教えてあげる
・そのとき得られなかったことで、何か今、大人の自分ができることはないか聞いてみる (「大丈夫だよ」 と安心させてあげる、「一緒にいるよ」と声をかけてあげる、温かい抱擁を届けてあげる、などが多いです。ある程度、毎日決まった時間を幼いパーツと相談して、イメージのなかでそのパーツと出会い、安心させてあげることを反復してみます。)
出典:「いごこち」神経系アプローチ 4つのゾーンを知って安全に自分を癒やす

こう考えると本当に子育てをするようなイメージですね。
自分が自分の良き理解者である親やセラピストになってあげられると俯瞰したり洞察する余裕が生まれます。

例えば上司から言われた些細な一言がトリガー(引き金)となり途端に怒りだしたのは、自分を安心させてくれない親たちのもとで生き延びてきた防衛適応によるものだと理解することができます。そして、職場では幼いパーツが傷つかないように「いごこちの自己」が心のなかで声をかけて守ってあげるよう実践します。そうするとそれ以降は、上司とのやりとりでは、子どものパーツの褒められたいという欲求からではなく、職務がうまくいくように集中できるようになります。

「昔の記憶を思い出し、それに働きかける必要はないのでは」と思われる方もいらっしゃると思います。それは、働きかけているパーツが望んでいればということになります。必ずしも過去の記憶に働きかけなくても、今の自分と過去の子どもだった自分との間に受容や共感が生まれ、今に安心を感じて両者の間で安定型のアタッチメントが築かれていればそれでOKです。

自律神経のバランス調整とレジリエンス(回復力)を目指しながら、自分自身の中に安定型のアタッチメントを確立し、それでも触発される過去の防衛策に忍耐強くユーモアを持って向き合っていくということが、安全にトラウマを癒すコツになります。

自分の様々なパーツたちに共感と思いやりが届いて、カンガルーの親子のように自分自身の中に安全基地が維持できるようになると、「存在そのものを喜べる」「いるだけで心地よい」という状態が生まれるようになります。

何かを成し遂げたり、目的に向かって活動や可動すること(human-doing) の充実感を持って生きることはもちろん楽しいですが、これがメインできてしまうと「何かをやってないと自分は価値がない」という思考の落とし穴にハマることもあります。

特に発達性トラウマを抱えている方は、育った環境ゆえにこの落とし穴にハマりやすい傾向があります。この傾向を回避するためには「TKS(T: サーモスタット K:カンガルーS: スパークリング・炭酸水)」をやって、ただ存在しているという人間の本質を実感できる (human-being) 時間を増やしていくことをおすすめします。human-beingがベースにあって、その上にhuman-doingがあると最高ですね。

そうやって自律神経のバランス調整とレジリエンス(回復力)がうまく機能されるようになると、その疲れさせないエネルギーのおかげで目の前のことに集中したり、休んだりしながら創造性や解決策をキャッチしていくことができるので、今までよりもっと余裕が生まれます^^

傷を価値あるものに

日本の技術に金継ぎという技術があります。これは割れたり欠けたりした陶器やガラス、木器、漆器などの器を、漆と金粉を使って修復する伝統的な技法です。金繕いや金直しとも呼ばれ、壊れた部分を漆で接着し、その上から金粉や金箔で装飾することで、継ぎ目が新たな模様のようになり、世界にひとつしかない特別な器に仕上げられます。

この技術は傷をなかったことにするのではなく、傷もその品物の歴史と考えて、新しい命を吹き込むという理念のもとに行われています。

傷をただの傷のままにすることもできるし
その傷を価値あるものにすることもできる
それをするかしないかは自分次第

人生の中の傷をどう捉えるかも
防衛パーツをどう扱うかも自分次第

過去に経験してきた傷のようなトラウマもなかったことにすることはできません。それなら自分の傷に金継ぎをして、世界に一つだけの、価値あるものとして引き上げるのはどうでしょうか?
あなたがあなた自身のセラピストになって「存在そのものを喜べる」「いるだけで心地よい」そう思ってもらえる日が来るように心から願っています。

今回は2回に分けてのだいぶボリューミーな内容でしたが、ここまで読んでくださってありがとうございます。最後に夏の海の自然なかで五感を味わいながら、体を動かすという「サーモスタット」と「炭酸水」ワークをしてきたので、その映像をもとに、ご自身のイメージワークの材料の一つとして楽しんでいただければ嬉しいです^^

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