きみとのキス
きみがぼくらに会いにくるときは
決まって朝ごはんがたべれなかったときだ
普通はぼくらの存在なんか忘れられている
風景の一部としてあるかないか
誰かの記憶になんかそう残らない
でもきみは他の人とちがう
ぼくらに近づいて
キラキラした目を凝らしてぼくらを見る
その目に入った幸せな花は
きみの小さな手にとられ
きみにキスされるんだ
学校に着くまで
ぼくを口に咥えながら
嬉しそうに歩くきみ
何があったか知らないけど
今きみのこの表情(かお)を引き出せているのは
ぼくだからだと期待してもいいかな
さんざんお腹が空いたと言うのに
ご飯を前にすると
お腹が痛くなって食べれなくなるきみ
いつかきみがお子様ランチを
ひとりで完食できるようになる日には
きみとさようならをしないといけないのかもしれない
それでいい
今きみの相棒はぼくで
きみがぼくらを探しにくる間はずっと
きみの相棒だ
冒険心の塊のきみ
近づいて
触れて
感じて
世界を知ろうとする
その手でおもさを
ぬくもりを知ろうとするきみは
どんな大人になるんだろう
きみのことを考えると
さようならができるのはうれしいことだけど
ぼくとのキスをきみに覚えていて欲しい
そう願うのは
この先も
さようならの後も
きみの相棒としてぼくらは変わらず
ここにいるから
ぼくとのキスの味は
きみが独りじゃないこと
きみを笑顔にさせられるものが
この世にはたくさんある
それをきみに思い出させる味