きみがなく日
親の顔を知らず
だれかに愛されているなんて知らずに生きた
暗闇の数年間
いつ襲われるかわからない恐怖の中
ただただ生き残ることに必死だった
一緒に生まれたたくさんの兄弟たちも
いつの間にか姿を消し
孤独な毎日
それでもなぜか食べるものはあって
なんとか生き残れた
7年前に生まれた時に見た世界
記憶が薄れてぼんやりだけど
光の世界
あの頃のぼくには外の世界で生きる力はなかった
でも必ずあそこに戻ると誓った
もう一度のあの世界に戻ったら
生きのびた理由が見つかる気がして
硬い壁に何度も当たり
心折れそうな毎日
この数年間は出口を探し続けた
ついに柔らかい場所を見つけ進むと
視界に広がる7年ぶりの外の世界
いろんな音が聞こえる
眩しくて
明るくて
どこか懐かしい
この世界は音で溢れていた
羽ばたけるようになって
ふと自分が出てきた場所を上から見ると
何度も脱出をトライした場所はアスファルトになっていた
自分が生きた証を残そうと
周りにかき消されないように
力の限り叫ぶ
我が子に会えないことを知っている母親たちが
子どもたちの安全を無事を願って
家を探し
命懸けで出産し
その場で息倒れる姿を見て
自分が愛されていたこと
大切に思われていたことを知る
ぼくを捕まえようと追いかける子とは違う
暗闇の中でうずくまりながら
今日まで生き延びたきみへ
暗闇で生きてきたぼくだから伝えられるものがある
どんなに過酷な状況でも
あきらめない限り
存在した意味が見つかる
そして暗闇の中では気づきもしなかった
自分が生き残るための条件が揃った環境に
自分がいたことに
きみがぼくの声を聞いて
いつかきみ自身がなく日
きっとそれは
きみが生きのびた理由を
そして愛を知った日なんだろう