きみの砦

きみが近づく気配を感じて

扉をさっと開く

怪物から逃げるきみが唯一避難できる場所

息を潜めるきみの鼓動が伝わる

狭い空間で

小さな身体をさらにぎゅうっと縮こめるきみ

今日も生死を分けるかくれんぼが始まった

怯えるきみのカラダに目を走らせる

見えない場所にたくさんついたアザ

きっとこの後に新しいものが増えることを考えると

ここから出てほしくない

世界が終わっても

この空間が最後まできみの砦になるように

ぼくはカラダを張ってきみを守りたい

そんな願いは虚しく

もって数分

一生ここに匿うことはできない

足で突き破られる安っぽい扉なのが悔しい

なんでぼくのカラダは防弾でできてないんだろう

でもここはきみが安心して泣ける場所

怪物の目をくらまして姿を消せる場所

外に出る勇気を蓄える場所

せめてきみがここにいる間

きみが泣いてることを悟られないように

ぼくは声をあげて歌う

きみの身体から流れる赤い雫を拭き取れるように

ペーパーの用意はばっちり

きみを笑かせるへんてこりんな本を置くスペースくらいは

持ち合わせてる

さあ 準備はいいかい

今日も生きて戻ってこい

ボロボロになってもいいから

必ず生きて戻ってくると約束してくれ

じゃないとここから出すわけにはいかない

いつかきみの世界がどこに行っても

呼吸がまともにできるくらい安全になるまで

ぼくはきみの砦であり続けるから

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